3-5

??Side

その夜 とある地下広場にて


ドレスコードで貴族のマスクつけた男女がたくさん集まっている。後方では画面で参加している貴族らしきものもいる。


どうやらここは競売会場のようなもので、これから何かが売られようとしている。


「父さん」

「遅かったな」

「調べ物をしていて。手紙、予定通り出したみたいです」

「あぁ、あの御方につたえておく」

「薔薇の一族も12月3日に向けてちゃんと動けてます」

「そうか」

「それより、どうして急に手紙を」

「あの御方の考えることは分からん。だが、確執があるのは確かだ」

「僕たちにもう少し情報をくれれば...」

「私たちも所詮はポーンでしかないんだよ」

「......父さん。この前起きたあの倉庫の事件のなんだけど」

「どうだ」

「ごめん。まだ足取りは掴めてないんだ」

「よほどの手練れか」

「もう少し調べてみます」

「あぁ。日本の警察もなめられるからな」

「分かってます」


にんまりとした笑みを浮かべ、男は父親の方を見る。


「それでは、準備がありますので」

「あぁ」


一礼をして、貴族たちの間を通り抜け、会場の裏へと歩みを進める。


少し歩くと子どもらしき叫び声、泣き声、暴れる音がいくつも聞こえてきた。


「はぁ〜こいつらは本当、うるさいねぇ〜」


ロック番号を解き、電気をつける。

明るくなった部屋は刑務所のような牢屋がいくつもあり、監視役が立っている。中には2、3人ずつに分けられて子どもたちが捕まっていた。


日本人、外国人。国籍もバラバラだ。


入り口付近に置いてあった鞭をとり、バチンッバチンッと牢屋の鉄格子に当ててならしていく男。


この鞭で何度も叩かれたことがあるのか、子どもたちは静かになり、鞭が当たらない距離くらいの端によって固まって怯えている。


そんななか、一人の栗色の眼をした少年が牢の扉の近くで男を並んでいた。


「へぇ〜?君のなまえは?」

「......」

「名前だよぉ〜」

「.........」


バチンッ


「ゥ"...」

「名前を言え」

「...ァヴ、ァ、、」

「あぁ〜喋れないのか〜。ごめんね?」


どうやらこの少年は言葉が理解できないらしい。


「たまにいるんだよね〜。言語が発達してないときにこうやって捕まって、今まで競売に出されなかった子」

「......」

「良いよ〜じゃあ今日は君で決まり。僕に出会えたことに感謝してね〜」


男は監視役に伝え、少年を綺麗な円柱の牢に入れ直す。


少しして会場に音楽がなり、少年が運び出される。

ここは人身売買の競売会場、今まさにこの少年を買い取ろうとしている貴族たちの競い合いが始まろうとしていた。


先ほど話していた父親の司会者がステージに座り、司会者が進行していく。


日本で行われている競売でも飛び交っているのは何千、何万ドル。


おそらく各国でも定期的に行われているのだろう。


少年は眩しいステージの上で鎖に繋がれ、この状況が理解できないのか、ヘタリと座り込んでいる。


「よく見れば可愛い顔してるねぇ〜。僕のものにすればよかったかな」


男がニタニタと独り言を呟いているうちに買い手が決まる。落札したのは、小太りで軍服を着た外国人。


「ふぅ〜ん、初めて見るお客様だね」

「るい」

「なに?父さん?」

「落札した人に軽く挨拶をしてくる。お前は子どもの手入れをしてくれ」

「は〜い」

「その話し方は辞めなさい」

「おっと、つい。ごめんね父さん」


男は間延びした話し方がデフォルトなのだろうか。


再び最初の牢に戻された少年のところに着替えとお湯を持って行く。


「着替えさせるから、何もしないか見てて」

「かしこまりました」


少年は訳がわからず暴れている。


「うるさいなぁ〜」


ドゴンッ


殴られ腕が折れたのかうずくまり苦しそうにしている。


「本当は綺麗な状態で出したかったんだけどなぁ〜、まぁ、もう他の国のやつらにも殴られたみたいだし、あの貴族もオークションの見るセンスがなかったということで」


画面で参加していた貴族のもとに少年が送られる。そこでどのように使うかは貴族次第。


たいていは奴隷、欲求やストレスのはけ口なんかが多い。子どもたちが生きるも死ぬも、全ては貴族の気分で変わる。


飽きたら殺して、また競売に参加する貴族も多い。


「あの御方に見つかってしまったら最後なんだよ。君も、僕たちも、どう足掻いても逃れることはできない」


怯える少年をじっとり見つめ、何かを後悔するかのように男は呟いた......





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