2-8
昴とエルザが到着し、今回任せる薔薇の一族についての情報を渡す。
「......これは、あり得へんやろ」
『事実だ』
「もう昴~びっくりなのは分かるけど、前から情報はあったじゃない」
薔薇の一族を手引きしている人物の名前を見ると、昴の顔色が変わる。
「それはあいつの...」
「確かに私もここまで足を突っ込んでるとは思わなかったわ」
「......ライ様」
『私が殺す』
「「え?」」
昴も殺し屋としては一人前だが、あの子となると失敗する可能性もある。Xは完璧でなければいけない、だからこそ私が直接手を下す。
『すでに情報は漏れている。近々来るはずだ』
「ライ様......止められへんかやってみてもええか?」
『...』
「昴っ!自分が何を言ってるか分かってるの!?」
「分かっとる!でも、あまりにも酷や...」
「ライ様、良いのでは?そのあと親子同時に叩くのも面白いかと」
「ライアー」
『......昴。私が決めたことを覆すのは許さない』
「分かってます」
『少しだけ時間をやる。戻れる余地があるならお前が監視しろ』
「分かりました」
薔薇の一族の話のあとは、ドイツの近況や、仕事で行った他の国のこと、最近殺した人間の話など報告をもらう。
「そういえば。遠坂の会合はいつなの?」
「12月3日です」
一瞬シン...となる。
12月3日、これまで何度も出てきた抗争が起きた日。
遠坂組は日本のトップに立つ組で、組長は遠坂正蔵、私の友人でもある。抗争が起きたのはその息子、遠坂桃李が若頭就任式を行った日のことだ。
抗争は日本の組だけでなく誰が依頼したのか海外の殺し屋も混じり、遠坂の時期組長・桃李を狙って起こされたもので、たった半日で激化していた。日本のヤクザ事情は厳しく、殺し屋が入るとなると組も戦況をひっくり返すのは難しいため、情報が入ってすぐ私もドイツから日本に飛んだ。
2日に渡り続いた抗争が終わりを迎えたのは、、、ある1人の人物が殺されたから。
「遠坂は何をかんがえてるのよ!」
「彼らにもその日にした事情があるのかもしれませんね」
「先に言えばいいだけじゃない!」
「まぁまぁエルザ落ち着きぃや」
「落ち着いてるわよ。ライ様、その日で本当に行くの?」
『あぁ。お前たちもだ』
昴とエルザが目を合わせる。今回の会合では最近の動向を共有すること。
最近は裏社会の争いごとも多く、とくに日本では多くの組が狙われている。
殺し屋と組が手を組むことはないが、私も日本に支部を置いている以上、情報把握が必要だ。
会合といっても大きいものではなく、組長と側近で話をする。
ただ、何が起きるか分からない以上、部下は多く居た方が良い。
「エルザ、とりあえず会合前に細かい仕事を終わらせるか」
「そうね。ちゃっちゃと片付けましょ」
「...ライ様、そろそろお時間かと」
『分かった』
「ライ様はどちらに?」
『ネズミが居てな』
「「ネズミ...?」」
不思議な顔をしたけれど、それ以上は答えず部屋を出る。
向かうのはエーヴェルヴァイン貿易会社の日本支部。代理をしてもらっているあいつに会いに行く。
本当は長くなるから会合で会うのが一番だが...急用のため仕方ない。
重い足を前に出し、車に乗り込む。
幾度となく見慣れた街並みを横目に、そいつのことを思い出した。
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