2-7

昴Side


先日コウから届いたメールをじっと眺める。


コウからのメールには

【学校で十全と友達になったよぉ~。あいつ以外と鋭いねぇ~】

と書かれてあった。


鋭い、まぁそうやろうな...俺の弟やし。


「スイートはほんと快適ねぇ」

「ライアーに怒られるのは堪忍やなぁ」

「ライアーなんてどうでもいいわ。ライ様は許してくれるわよ。それよりアンタいつまでメールに釘付けになってんのよ。なに?ラブレター?」

「あ、おいっ!エルザ!」


隣にいるこのエルザという女?...腰まであるウェーブのかかった金髪。タイトなドレスにサングラスをかけている。


はたから見ればどこかのセレブに見えなくもないんやけど......


こいつは元男。


ライ様はなんでこんなやつをパートナーにしたんか全く分からん...。


「なにこれ、コウちゃんじゃない」

「十全と友達になったそうなんや。びっくりしたわ」

「え!?どこで友達になるのよ!」

「学校やて、学校」

「がっこう~!?え、コウちゃん学校行ってるの??!」

「仕事でちゃうか?四ノ宮学院には遠坂がおるしな」

「あ~遠坂ね」

「なんや?」

「ライ様がそこまで遠坂にする必要は本当はないのよ」

「またか」

「またって何よ。私はあいつらが嫌いなだけよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「嫌いの以下ってなんや?」

「殺したいほど憎い相手」


そういって興味をなくしたようにスイート席にあるベッドに寝ころぶ。表情は少しだけ曇っている。エルザは14歳のとき海外旅行中にたまたま母親と誘拐され、母親は殺され、自分は人身売買にかけられそうになったらしい。


そこにたまたま居合わせたライ様に助けられたみたいやけど、本間あの人は女神さまやな~っていつも思っとる。


エルザもライ様が好きやから、遠坂のことはあんまよく思ってへんらしいけどな。


ただ、仕事は仕事で割り切るやつやから、何だかんだで俺も信頼しとる。


「おい、健司スマホ返しぃや」

「ちょっと!健司って言わないでよ」

「けんじ~ww」

「うるさいわね!殺すぞ」

「そんな怒らんでええやんか」

「フンッ」


スマホを取り返し、もう一度メールを見て返信を考える。しばらく仕事でスマホ見れてへんかったからたまっとるな~。


「あいつ、元気にしとるかなぁ」

「あんたに似てんなら、元気すぎるくらいじゃないの」

「せやな」


エルザといろいろ話しているうちに、ドイツから17時間のフライトを終えて日本に着く。


「お待ちしておりました」


手配してもらっていた車に乗り込む。三年ぶりの日本は秋、大きな公園にある葉が紅葉で彩っている。いろんな家族がレジャーシートを広げ会話を弾ませ、もみじの木の下で写真を撮るカップルもいる。


「あら、私も日本についたことだし。久しぶりの日本食とビールでも外で食べようかしら」

「なにゆ~てんねん。すぐ仕事やろ」

「え~良いじゃないの。次また、いつ帰ってくるか分からないんだし!」

「はぁ~、仕事終わってからな」

「そうこなくっちゃ!!コウちゃんたちも誘っちゃお~」

「お前コウのこと好きやな」

「コウちゃんは弟みたいなものよ」

「分からんでもないけどな」


二人はXの最年少で殺し屋。ライ様も二人と年は変わらないのに組織の一番上に立っとる。


若者が殺しの世界に足を踏み入れることがどういうことかは並大抵の人には分からんやろうけど、ライ様は普通とは違う。


ある意味イカれた奴らに仕事をあたえてる。


【居場所】


俺たちも同様、メンバーはみんなそう思ってるんやろうな。


っと、そうこうしているうちに日本支部へ着く。


入るのは裏口、監視カメラに手をあげて海斗にロックを解除してもらう。そのままエレベーターに乗り、一直線に向かうのは最下層。


ライ様の部屋につき、重い扉をノックして入る。


お久しぶりやで、ライ様。

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