2-6

シーリングスタンプのついた手紙が目に入り、開けてみる。


――――――――――――――――

【ライ・エーヴェルヴァイン様】

あなたの真実を知っています。

――――――――――――――――


日本でエーヴェルヴァイン宛・・・?


少し考え込んでいたところでライアーから声がかかる。ヤブ医者はようやく帰ったか。


「ライ様、どうされました?」

『......』


無言でライアーに手紙を渡す。


「エーヴェルヴァイン宛ての手紙ですか?私ではなくライ様ですね。真実、ですか」


エーヴェルヴァイン。ドイツを拠点に展開する貿易商。


その社長をしているのはこの私なんだが、名前はライアーの本名を使っている。理由は私の本名が知られてはいけないから。


裏では殺し屋、表では貿易会社の社長。表の方はある優秀な人物に任せている。


会う必要があるか...


あいつにメールを送る。


『表で私を嗅ぎ回っているネズミがいるようだ』

「えぇ、早急に捕獲が必要かと」

『私が動く』

「かしこまりました」


そういってお辞儀をして出ていった。


時刻は午前5時、昼になれば昴とエルザが到着するだろうから、仕事を任せて夜に出る。


1、2時間ほど仮眠するため、ベッドに移った。


暗闇。何も聞こえないこの環境は意外と好きだ。私の全てを包んでくれる。


起きた後のことを考えながら目を瞑る。
















起きるとライアーが飲み物を用意している。先ほど入ってきたことには気づいていたが、特に用はなかったのでスルーしていた。


「おはようございます」

『......』

「薬をお持ちしました」

『あぁ』


4種類ほどの薬を飲み、起き上がってローブを脱ぐ。着替えている間に後ろから視線を感じる。


『なんだ』

「遠坂との会合日が決まりました」

『いつだ』

「12月3日です」

『......』


12月3日。1カ月以上あるが、よりによってその日にするとはあいつも悪趣味だな。


『問題ない。返事しておけ』

「はい」


椅子に座り仕事の依頼を引き続きチェックしていく。ドイツを始め、日本など世界各国から依頼が来る。


――――――――

依頼のやり方は1つ、

①世界各国にある裏ポストに殺して欲しい相手の名前と詳しい情報、自分の名前と生年月日などの個人情報を記載した手紙を入れる。


②選ばれたら薔薇のサインが書かれた手紙が届く。そこに金額と口座番号、期日が書かれているので、期日までに金を用意して振り込む。

期日までに振り込まなければ辞退したと捉える。(最低500万~殺す相手で決まる。裏の人間なら数億になることも)


③振り込んだ後はひたすら待つだけ。後日、自分の元に相手が死んだ証拠が届く(指や眼球など)

――――――――


裏ポストは郊外の廃ビルに設置している。情報はネットで「相手を殺す方法」など、他者の死について検索しているもののみに表示される。


至ってシンプルだが実際だれかを殺したいと思っているやつは世界中にいて、今日も明日も誰かが殺され誰かが報われている。


日本では自殺した人の親族が依頼してくるケースがもっとも多い。日本の自殺者は年間2万人以上。ほとんどがパワハラやいじめなどで生きる意味をなくした若者。


日本は加害者に甘い。だからこそ、Xを通して加害者を殺し、被害者の心を救っているのだろう。


私にしてみれば理由など心底どうでも良い。


仕事の振り分けはメンバーの適正などに合わせて、自分でする。そのあとは海斗を通してドイツ本部、日本支部に情報を送り、決定したメンバーに仕事をしてもらう。


全ての仕事が終わり、コーヒーを口に含む。


そのときコンコンっとなり、扉が開く。


「「遅くなりました。ライ様」」

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