2-5
ライアーSide
ライ様が医者とエレベーターに乗り、部屋に戻ったのを見て海斗と話をする。
「ライ様が藍澤夏稀を気に入りましてね」
そう伝えると、目を見開き驚く。
無理もない、自分の可愛い後輩が殺し屋になるのですから。
「情報分析班だよね?」
少し強めの声で聞いてくる。
「それは藍澤次第です」
あれは、鳥籠の中で縛られるだけでは物足りないという眼をしていた。
血に飢えているやつを抑える唯一の方法は血を与えること。
ライ様なら与えてくれると藍澤夏稀も思ったでしょう。
「あいつは、」
一言発した海斗が何かを考える。
カランカランッ
誰かが入ってくる。リーリエを使うのはXに依頼に来たものか、海斗に情報を貰いに来たものか、Xのメンバーだけ。
といってもメンバーはほとんど裏口を使うから、ここから入ってくることはない。
マリアとコウも合流して少し話したあと裏口に回った。
入ってきたのは長身の男。
パーカーで顔を隠しているけれど、見覚えのある姿ですね。
「海斗さん、久しぶりやな」
「十全」
あぁ、そうでした。この方も人を探してるんでしたね。
遠坂といい、渡辺十全といい、ほとんど姿も形もない者を探すとは、物好きですね。
「新しい情報ないか聞きに来た」
「ないよ。前にも言ったけど、もう死んでるかもしれない人を探すのは容易じゃない」
「海斗さんも分かっとるやろ?」
「......」
「兄貴は死んでへん」
「お兄さんをお探しなんですか?」
海斗は嘘があまり得意ではないため話に入る。
「お前誰や?」
「失礼、私も海斗さんに情報をもらいに来たんですよ」
「そうか。人探しか?」
「えぇ、最近噂になってる組織について」
「薔薇の一族のことか?」
「ご存知で?」
「くm...ちょっと裏で繋がりある奴がいてな。いろいろと噂は聞いとる」
「そうですか、私も少しだけ聞いたんですけどね」
「何を聞いたんや?」
「どうでしょう。お互い一つずつ話すというのは」
「ええけど、なんや裏あるんとちゃうか?」
「ありませんよ。海斗さんは毎回情報を一つしか出してくれないので、同じように追う人がいるなら、共有できればと思いましてね。それなら海斗さんも大丈夫でしょう?」
海斗の方を見る。大丈夫かという眼差しに微笑みで返す。
「問題ないよ。ここでそれをする人は初めて見たけどね」
すぐさま意図を読んだかのように答えてくれる。
頭の良い相手との会話は疲れませんね。
「まぁ、ええよ。そういえば、アンタ外人なん?」
「えぇ、まぁ。それが何か?」
「いや......イケメンやなぁ〜と思って」
心底どうでも良いことですね。
「それは嬉しいお言葉を。では、どちらから話しますか?」
「俺から言うわ」
「お願いします」
少し間をおいて渡辺十全が話し始める。
「薔薇の一族は四年前に起きた抗争で、崩壊した組の生き残りが集まって立ったらしい。どうも一人の小さい少女を追っているとか。
やけにその少女に執着しては探すためにいろんな組を襲っては情報を集めているらしいが......俺が知ってるのはそれだけや」
少女、ねぇ...
四年前、ライ様は1人で抗争を終わらせた。遠坂の計らいで全員を殺しはしませんでしたが、想像通りなりましたか。
日本の裏組織はやはりぬるい。
とはいえ、あの時あの子どもを助けた殺し屋を追っているということは、また狙われる可能性も、、、、
まぁ、その程度の情報は海斗がすぐにでも調べるでしょう。
海斗と目を合わる。軽く頷き全体を調べ始める。
ライ様仕込みですし、あっという間に組織のメンバー全員、それを従えているやつを洗い出すでしょうね。
「ありがとうございます。とても貴重な話でした」
「大した情報ちゃうけどな...そっちは?」
「そうですね。薔薇の一族ですが、ある殺し屋に狙われているとか」
「...誰にや?」
「殺し屋か情報屋か、また違う何かかは分かりませんが、、、名は...ブラックパール」
「ブラックパール?」
「えぇ、腕の立つ二人組の殺し屋で、いろんな国に出没しているそうです。近々日本に来るとの噂があります」
「特徴はないんか?」
「そこまでは...」
「そうか、、兄ちゃん、ありがとな!」
「いえいえ」
にかっと笑い、手を振って元気よくお店のドアを開け出ていく。
少しの沈黙が流れる―
「弟はいつもあんなに元気なのでしょうか」
「そうだね。だから兄は笑顔を守りたいんでしょ?それに、遠坂には必要だと思うよ。夏稀にとってもね...」
「ライ様よりもですか?」
「それは......比べるにも値しない」
「フフッ...海斗、アナタは後輩思いなのかどっちなんです?」
「さあね」
変な人ですね。
「これ、ライ様に渡しておいて」
「おや、早いですね」
「当たり前でしょ」
薔薇の一族についての情報をUSBで渡される。
「さて、そろそろライ様も怒られているようですから行きますかね」
「ライアー、ドSだよね」
「何のことでしょう」
海斗の質問に軽く返し、エレベーターに乗る。
あぁ、コーヒーを持ってくるよう言われていたのでしたね。
最下層から1つ上の部屋でコーヒーを淹れ、もう一度エレベーターで降りる。下にはライ様と私の部屋しかない。
コンコンッ
「ライ様、コーヒーをお持ちしました」
案の定、疲れ切った顔をして医者の話を聞いている。
たまにはこういうのも良いでしょう。
背負うものが大きいがゆえに大人びているが、貴女はまだ17歳だ...
しかし、この医者。何度か会ってはいますが、どうも好きにはなれませんね。
おせっかいがすぎる、、、ここらへんで間に入りますかね。
しばらく攻防を続けていると、ライ様が何やら考え込んでいるのが目に入った。
「向井さん。失礼ですが、仕事がありますのでここらへんで」
「あぁ~?ったくよ、医者をぞんざいに扱いやがって......」
頭をガシガシかきながら出ていく。
扉が閉まったのを確認し、一息ついてライ様に声をかけた。
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