1-3
向かうのは第三音楽室。
マリアとコウに現状の報告をしてもらうためだ。
廊下にも関わらず日の当たるところでは、制服の下に来ているパーカーのフードを深く被る。
アルビノ。
普段は黒い目、黒い髪になるようにカラコンとウィッグをつけているが、本当は白い髪に赤い眼。
裏の世界ではこれが目立つ上に、この姿を知られるのは計画に影響が出る。
何より世界トップの殺し屋が日本に今いると知れたら、さらに面倒なことにもなりかねない。
音楽室に入るとすでに二人は来ていた。
「あぁ〜ライ様〜もう聞いてくださいよぉ〜」
「コウうるさいわよ。ライ様、お待ちしておりましたわ」
「ライ様〜、マリアがひどいよぉ〜」
「あら、何を言うの?いつも優しいでしょう?」
「うぇえ〜」
犬のように駆け寄ってくる二人は私の部下。手は焼けるが、ライアー同様に私が直接育てた最高傑作に近い人材だ。
『報告を』
「はい」「はい〜」
わいわいしていても仕事になれば雰囲気がすぐ変わる。そう教え込んでいるからだ。
「遠坂組の若頭含め、全員と話せましたわ」
「私たちが遠坂組を知らないことに驚いていましたが、なんとかやりすごせたかと」
遠坂、この学院に二人を入れたのは、この子を守らせるため。
「気になったことは」
「今のところはないですわね」
「はいは〜い!僕からも、一つ気になったことがありましたぁ〜」
『なんだ』
「一人、明らかにこっち側かな〜と」
「私も思いましたわ。あれは、こちら側の人間のようですの」
『名前は』
「藍沢夏稀、ですわ」
藍沢夏稀か、使えそうか自分の目で確かめる必要があるな。
『分かった一度確かめる』
「ありがとうございまぁ〜す」
『コウ、学院はどうだ』
コウが笑みを崩し真面目な顔をして私に向き直る。
「俺には知らない世界です。連れて来てくれてありがとうございます』
私の部下は全員が悲しい過去を持つ。コウも、マリアも。
だからこそ強くなれると、殺すつもりで訓練をさせた。
「ライ様、私もありがとうございますわ」
『あぁ』
小休憩のチャイムが聴こえる。
「ひとまず私たちは教室に戻りますわ。またお昼休みに」
『ライ様、失礼しまぁす〜』
二人とも一礼をして音楽室を後にする。昼休みまで仕事をするためPCを開く。
Xに届いた依頼、もう一つ表の仕事に関しても確認する。
もう一つに仕事は普段は人に任せているが、必要な時は自分で行なう。といっても表の仕事だから裏よりも生ぬるい。
簡単に取引先情報を情報を確認して仕事を終える。
少し時間があるため、一区切りついたところで藍沢夏稀について調べてみた。
『あぁ、、そういうことか』
情報をライアーにのみ送る。
藍沢夏稀、遠坂にいるべきではない人間だ。
だがそれはあいつ自身の意思で決めるべきもの。でも、お前には遠坂は物足りないんだろう?
私はお前が欲しい、私がお前の乾きを癒してあげる。
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