丘の上の一軒家

「ただいま」

「望んでいた収穫は、なかったよ。見たまえ。このポケットいっぱいのキャンディを」

「彼は常にこれほど沢山の砂糖菓子を持ち歩いているのだろうか」

「なにかね」

「無論、きみが無類の甘党であると心得ているとも」

「ゆえに、このキャンディは全てきみのものさ」

「いざ差し出されると手を引っ込めるのはどうしてだい?」

「なにも企んでなどいないよ。ほら、他者の厚意は黙って受け取りたまえ」

「まったく。彼に見つからず外を出歩けたためしがない。手強い鬼だよ、実に」

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