第20話

野生動物の軽快な足音とは違う鈍く重い音。


眠りから覚めたワタシハ、とっさに音のする方へとけ出した。


ザッ ザッ ザッ


草花をかき分け、大木たいぼくのすきまをすり抜ける。



黄色い月の明かりに照らされ、樹々の影の間から、人型が見えた。


はっ……


ニンゲン達の姿。


前足のヒヅメに力を入れ走るのをやめ、木陰にソッと身を隠した。ニンゲンからワタシは見えないはずなのに、思わず身をひそめてしまうほどに、

ニンゲン達の放つ気配は、ドス黒くよどんでいた。


木陰から見えるニンゲンの数を数えた。一、二、三……六、

いや、まだいる。七………八…


ワタシから見えるニンゲンの数は八。





人数を把握した瞬間、シュッ、ボッ。


火が見えた。


とっさに脳裏に浮かぶ、あの火の海の世界。


こいつらが・・・


ワタシハ、木陰から飛び出していた。

ニンゲン達の元へ駆け出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る