第36話 寝たフリ作戦
「ホルトさん、手術中に言ってた事なんだけどさ」
今は片岡さんの部屋で床に座って、変身したままホルトさんに話しかける。
『…………』
無言のまま。
たぶん、俺が話すのを待ってるんだろう。
「ホルトさんの仲間が居れば、どうにかなるんですよね」
『ああ。元々が同じであるからな』
ホルトさんの考察では魔法少女に埋め込まれたアレは、ホルトさんの仲間の身体から造られた物であるとの事。
オリジナルであればナイトメア発生のリスクを極限まで低下させて除去できるかもしれないらしい。
「ホルトさんの仲間を助ける事が、魔法少女を助ける事になる」
はずだ。
『ああ。儂らの目指すべきはここで合一した』
ホルトさんの仲間を助ける為に。
そしてきっと、ホルトさんの仲間は。
「日野木修弥が知ってる」
魔法少女を生み出した日野木ならば、ホルトさんの仲間の所在を理解してるだろう。
『儂らは日野木修弥を探し出す』
だからと言って、どう言う手を使うべきかは分からない。俺に日野木に繋がるコネはないんだから。
「……阿坂に賭けるしか」
日野木を見つけ出す方法がない。
『方法はある』
「え?」
『阿坂には日野木と連絡する術があるんじゃろう?』
ホルトさんも日野木を探し出さなければならなくなったからか、今まで以上に積極的になってる気がする。
『日野木もお前さんの事が気になっとるのは変わらんはずじゃ』
だから。
『阿坂がお前さんを捕まえたと、日野木に伝えれば良い』
ホルトさんはそう続けた。
「捕まったフリって……上手く行くか?」
『どの道、日野木のもとに転がり込めればそれだけでこの作戦は成功であると言ってもいい』
そこからの実力行使であれば俺たちが負ける道理はないとの事。
「早速、明日にでも阿坂に頼むか」
翌日。
「────それ、大丈夫かね?」
早速と、阿坂に話せば心配そうに顔を歪めた。
「いや、私としては構わんのだが。上手く行くものか?」
「現状そうするしか方法がないんだよ」
慎重に慎重に、とかやってても犠牲が増える。目に見えないところで誰かが死んでいく。
「理由はそっちに任せる」
「……変身は解けないのか?」
変身したままの俺を捕まえるのは信じられないかもしれない。
「ホルトさん……服装だけでも」
『ああ、任せろ』
うねうねと俺の服が変形して、パーカーとチノパンツになる。私服だと言い張っても通りそうな感じだ。
「それ、変身は解けているのかね?」
「普通に私服だろ?」
「うむ……まあ、そうか」
阿坂が腕を組む。
「私としては君の信頼を裏切って、日野木に差し出したあたりが妥当だと思う」
だから、寝たフリをしてくれと頼まれてしまった。
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