第34話 魔法少女である理由
日も落ちすっかり暗くなった頃、俺は阿坂の部屋に訪れていた。中に入って鍵を閉めてから阿坂に向き直る。
「……進展なしか?」
「そうだな」
協力する話からもう直ぐ一週間は経とうかというところだ。
「本当に呼びかけてんのか?」
阿坂でも一つたりとて出てこないってのが余りにも信じられない。流石に一人くらいは居るもんだと思ってた。
「呼びかけてはいる。だが、しかし……だな」
「どうすんだ。俺よりもアンタの方がアテがあんだろ」
俺が声をかけられるのは、犯罪者に成り下がった俺にも話しかけてくるあの子か、北上さんくらいだと思う。
だとして、声を掛けたからって付いてきてくれるかも分からない。
「一人でも居れば、それで良いが……」
「無理矢理に連れてくるのはナシだ」
俺が一言注意すれば「当たり前だ」と阿坂が答える。
「もう少し時間をくれ」
「……分かってんだろうな、阿坂。俺たちがこうしてる間にも」
「分かってる……私がやらねばならない事も」
俺は今日はこれで終わりだろうと、部屋を出ようとして。
「コンシーターっ!」
呼び止められた。
「来たぞ! 一人、連絡が!」
俺はゆっくりと振り返って、阿坂を見る。彼の向けるスマートフォンの画面には一つの連絡が。
「よしっ!!」
俺は小さくガッツポーズを作り、椅子に座る。これで必要な要素である魔法少女はなんとかなった。
一つ、前に進む。
「コンシータ、手術の日程は……」
「その魔法少女に任せよう。できれば早い方が……俺たちとしては良いんだけど」
「設備は私がどうにかしよう」
「決まった時には教えてくれ」
「ああ」
これで。
「じゃあ、俺は」
椅子から立ちあがろうとして「少し待て」と。阿坂は顔の前で手を組んで深く息を吐く。
「……手術を行うにあたり、君には説明をしておかなければならない。魔法少女手術がどう言ったモノで、今回どう言った事を行うのかを」
魔法少女手術について、阿坂が話し始める。
「魔法少女手術は女性でなければ行えない。それは分かっているな?」
「……まあ、そんくらいは」
俺は元々、魔法少女契約の仕事についてたんだ。さすがにこの程度は知ってる。
「これは魔法少女手術の際に子宮に魔法少女になる為のモノを埋め込むからだ」
だからこれは女性にしか行えない。
魔法少女である理由はそういうことだ、と阿坂が言う。
「論文にもこれは記載されていた」
そんな補足説明。
だからと言ってナイトメアと繋がる事はないのが普通だと思う。
「それを今回は摘出する」
「……確かに考えはするか」
むしろ、それ以外の方法なんて思いつきはしない。言葉にしてみれば簡単だけど、阿坂もやってみた事はない。
「……子宮」
ふと、青木さんの事を思い出した。
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