第29話 本当に魔法少女手術を生み出したのは?

 

阿坂あさか……明衡あきひら

 

 それが魔法少女手術について検索した際に研究者として一番最初に出てくる人物だ。

 ネットの彼の紹介には代表的な研究に魔法少女手術開発と書かれてる。

 今度は阿坂明衡の名前で画像検索にかけてみる。すると威厳ある雰囲気の男教授の写真が出てくる。

 

「全然違うじゃねぇか……!」

 

 俺が見たアイツの顔は全く出てこない。

 阿坂明衡の写真とはどこも似てない。

 魔法少女手術を開発したと言ってたのに、ネットには何一つとして情報が出てない。

 

「時間がない、のに」

 

 もしかしたら出てくるかもって思ったのに。アイツを見つけ出せるって思ったのに。

 早く、あの子を助けたいのに。

 

『共同研究の可能性もあるじゃろう』

「あ」

『もしかすればあの男の事を、この阿坂とやらは知っておるかもしれん』

 

 そう考えれば誰も嘘をついてないことになるはずだ。あの男も確かに魔法少女手術を開発して、阿坂明衡も研究に携わっているとなれば。

 

「……なら」

 

 俺個人にはアテというのが特にない。

 この可能性は確かめる価値がある。

 

「────阿坂明衡か?」

 

 直ぐに阿坂のいる大学を見つけ、研究室を調べた。

 

「君は、コンシーター……と呼ばれていたかな。それと指名手配されていたね」


 椅子に座って俺を出迎えた。


「質問に答えろ」

「そうだ。私が阿坂明衡だ。それで何か用かね? 指名手配犯にすら教えを請われるとは中々ない経験だ」

 

 随分と余裕そうな態度をしてる。

 

「阿坂明衡、お前は本当に魔法少女手術を開発したのか……?」

 

 俺の質問に阿坂は眉をピクリと動かして「何を聞いてくるかと思えば」と呟く。

 

「魔法少女手術は私が始めた。どこを見てもそう書いてあるだろう」

「アンタ一人でか?」

「助手に手伝ってもらった事はある。が、主導は私だ」

 

 なら、知ってるはずだ。

 

「じゃあ、なんで……魔法少女が、ナイトメアを生み出す」

 

 俺が聞いた瞬間に阿坂は時間が止まったかのように動きを止めた。

 

「は?」

 

 また動き出した時、阿坂は意味がわからないと言いたげな顔をしていた。

 

「どういう、事だ……?」

「お前が作りあげたんだろ。魔法少女を」

 

 なら知ってなきゃおかしいはずだ。

 

「何を、言っている」

「俺は、俺の見たままを言ってる。魔法少女からナイトメアが生まれた……それで、魔法少女は……死んだ」

「そんな訳、が」


 阿坂は顎を撫で、考えるような仕草をした。


「いや……嘘だ。嘘、だな。お前の言葉を信じる理由は、ない」

 

 拳を握りしめ下唇を噛み締めて、湧き上がって抑えられなくなりそうな感情を必死で堪えて俺は事実を伝える。

 

「そうだな。お前が俺を信じる理由なんてない。それはそうだ。でも、俺は見たんだよ……! 目の前で魔法少女が死ぬトコを! ナイトメアが生まれる瞬間を!」

 

 胸ぐらを掴んで、椅子から立ち上がらせる。そして、目を無理矢理に合わせる。

 

「私、は……」

「お前は、魔法少女を生み出した」

「違う……そんなのは」

「お前は人殺しだ」

「……違う! 私は……私は、違う!」

 

 目を見開いて阿坂が叫んだ。

 

「責任逃れか」

「私、は……」

 

 聞かなければ。まだ聞きたいことがあるんだ。確かめなきゃならない事があるんだ。

 俺は阿坂を睨みつけながら、次の言葉の為に口を開こうとして。

 

「フラッシュ!」

 

 部屋の中を光が満たす。


「見えねぇ」


 視界が、やられた。

 

「魔法少女か」

 

 殺傷能力のない目眩しの魔法を使われた。 

 俺の視力が戻った時、阿坂の姿は見当たらなかった。

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