第28話 ネクストステップと行こうか(胸糞注意です)

〈片岡恵〉

 


 視界がぼやける。

 ここ最近はずっと、口の中に鉄の味が広がってる。


「いい加減吐いてくれなーい?」

 

 殴られる。

 蹴られる。

 そしてまた水責め。

 暴行だけが続く。でも私は、まだ大丈夫。

 

「あの魔法少女がねー、変身解かなくなったりしてさ。中々面倒な事になっちゃったんだよね」

 

 私は、殺されない。

 穂村くんの情報を持って耐えてる限り、この人は私を殺せない。穂村くんの情報を唯一持ってるかもしれない私を殺せば、それ以外の情報源を見つけ出す事は困難だ。

 

「……まあワタシのせいってのもあるかもなのは否定しないけどね。君の家に帰っていくのを見て、今は彼女しか居ないと思ったからちょろっと人を雇ってね。捕まえてきてもらうように言ったんだ」

 

 けど、それも失敗だった。

 そう言いながら彼は立ち上がって私の方に近づいてきた。

 

「おかしいだろ! 何で変身解いてないんだよ、アイツはさぁ!?」

「っぐ……!」

 

 お腹を蹴られる。

 執拗に、何度も。

 

「普通解くだろ! 室内にナイトメアが出るかよ! 魔法少女にもプライベートとかあんだろうが! 意味分かんねぇっての、なぁ!!?」

 

 予想通りにいかなかったストレスを私にぶつけてくる。

 

「……おかげで、最悪だよ! ずっと変身したまんま! ああっ、もう本っ当にイライラする! 大人しく捕まれよ! 大人しくワタシに解剖されろよ!」

「ぐっ……あ、あぅ……」

 

 叫び散らし、暴力を振るうのが止まる。

 ブツブツと小言で何やら唱え始めた。

 

「ぁぁ……強いのは良いんだよ。だから解剖したいんだから。逆に、さ……強くなきゃ何の意味もない。弱かったら解剖する意味もないしさ。弱かったら、未登録だろーが……どうでも良かったんだよ」

 

 溜息が聞こえた。

 

「強すぎんだろ、クソゲーがよ」

 

 舌打ちをして椅子に座った。

 

「こっちもこっちで色々手は打ってんだけどさ、いい加減に吐いてくれると全部スッキリまるっと上手くいく訳、オーケー?」

「…………」

「はあ〜……返事くらいしたら? 大人としてどうかと思うよ?」

 

 不機嫌な顔で私を見つめる。

 思い通りにいってないのは少しだけ嬉しくもある。

 

「早く変身前について教えろよ。ワタシに名前を教えろよ」

 

 口を開くつもりはない。

 痛みにも少しだけど、慣れてきた。まだ耐えれる。殴られるだけ。蹴られるだけ。

 水責めは苦しいけど、死なないから。

 

「……心苦しいけど、次のステップに行こうか」

 

 彼の付き人らしい、いつも拷問をかけてくる人が私の身体を押さえつけて。

 

「爪、剥ぐよ」

 

 瞬間、今まで以上の痛みが走った。

 叫んだつもりだった。

 

「爪は一、二ヶ月で再生するんだよね。君が吐くまで付き合うぜ、ワタシは。どうだい? 辛抱強いだろ? 真似しなくていいぜ」

 

 嬉々として、私を見つめていた。

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