第26話 ホルトさんだからできる事

 指名手配される事となった俺はある一つの覚悟をしていた。

 覚悟、と言うよりも諦めと言った方が良いかもしれないけど。

 それが、完全に全てが敵になると言う事。

 誰かが、と言う話じゃなくて、この世界の多くが俺を敵だと認識すると言う事。

 

「……でも、全部が終われば」

 

 それで問題ない。


「……ホルトさん、まだしばらく変身は解けそうにないや」


 変身を解いても問題がなくなる時というのは俺がすべき事を全て終えた時だ。魔法少女が生まれてこない、魔法少女たちが全員救われてる。

 それくらいしかない。

 全部が終わって、俺が変身を解けば指名手配を受けた魔法少女はこの世界から消える。

 

『儂は構わん』

 

 病院施設を回り、魔法少女に関わる場所だけを破壊した。何かしらの情報が手に入るかとも期待したけど、医療に明るくない俺には何も分からなかった。

 時間も掛けてられなかったし、直ぐに次へと動き続けて。

 

「……警戒強くなったな」

 

 指名手配されてるし。

 顔を見られても問題ない、一刻も早くと動いた結果か。

 とは言っても。

 

「全部無視だ」

 

 そういうのを問題視しなくても良いと俺は判断した。これは過信なんかじゃない。

 

「来ましたね、テロリスト」

 

 侵入した病院施設で待ち構えていたのは数人の魔法少女だった。


「テロリスト、か」

「そうでしょう?」


 否定はできないか。

 

「……ナイトメアへの対応はどうした」

 

 金髪ロングの魔法少女が一歩近づく。

 

「一般人では相手にならないとの事でしたので」

 

 まあ、それはそうだ。

 

「それに、ここを守る事がナイトメアへの対応の一つであると認識していますので」

「…………」

「大人しく投降してください」

 

 少女たちが構えた。

 俺がこの先に進もうとするなら力づくでも抑えつけるという意思の表れにも見える。

 だからって、止まる気はない。

 最小限に。

 

「わたくしたちは対ナイトメアの為に魔法少女となりました。これは魔法少女同士で戦う為の力ではありません」

 

 彼女は、俺を恨んではいない。

 それは分かる。

 

「……通らせてもらう」

 

 俺も戦いたくはないけど。

 

「ホルトさん」

『了解した』

 

 俺の服が変形して触手を形作る。

 元々はホルトさんなんだから、どっちが正しい形かってのは分からないけど。こういう事もできるらしい。

 

「ぐっ……」

 

 ホルトさんの触手が押さえつけた少女が右腕を上げて、俺に向けてくる。

 魔法を行使しようとしてるのか。

 

「魔法を使っては、なりません!」

 

 けど、止められる。

 

「で、もっ……!」

「それで、ここが壊れては元も子もありません!」

 

 俺はホルトさんに押さえてもらったまま魔法少女手術室まで向かう。どうにも距離の問題で途中で解けたみたいだけど。

 

「死んでないよね」

『殺す訳なかろうが。気絶させたんじゃ。後遺症などが出んようにな』

 

 なら良かった。

 俺は魔法少女手術室の設備を破壊した。

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