第25話 鶏が先か、卵が先か
「コンシーター!」
「止めろ!」
ナイトメアを倒した後、光弾が迫ってきた。当たったところで意味はなさそうだけど、俺には届かなかった。別の光弾によって相殺されたから。
俺を光弾から守ってくれたのはさっきからずっと一緒にいた少女で、攻撃してきたのは初めて見る顔だった。
「貴女も必要ないって言われたのよ!」
邪魔者を退かそうと殴りかかるが拳は抑え込まれ、取っ組み合いになる。
「オレはお前の事情は知らない。どんだけ憎く思ってるかも分からねぇ。でもな、アイツが苦しんでんのは見てきてんだよ!」
俺は何もできずに攻撃を仕掛けてきた魔法少女を見つめる。
「お前だって八つ当たりだって分かってんだろ、こんなの。発端は確かにアイツだったかもしれねぇ」
「…………」
「お前らが否定されて原因のアイツを攻撃したいって思ったようにな、オレはアイツが苦しむのを黙って見てたくねぇって思ったんだよ!」
攻撃を仕掛けてきた少女は何も言わずに去っていった。
「……ありがとう」
「気にすんな。んで、どうすんだ。ナイトメアを倒すのか? 世界中でナイトメアは出現し続ける。何十年ってレベルで全部のナイトメアを完全に倒しきれんのか?」
「…………」
世界中でナイトメアが発生してる。
だから、世界中に魔法少女が送り込まれてる。完全にナイトメアを倒すのが……。
「終わら、ない」
頭の中が整理されていく。
「一人じゃ無理だってやっと分かったか」
違うんだ。
これはもっと根本的な話で。
魔法少女が消えなければ、ナイトメアの存在が消えない。そしてあの男が居る限り、魔法少女は生み出され続ける。
「……終わる訳が、ない」
「おい、大丈夫か?」
ナイトメアを倒した所で意味はない。
ナイトメアを全て倒せば魔法少女の必要のない世界になるんじゃない。魔法少女が居なくなって、ようやくナイトメアの存在しない世界が成り立つんだ。
逆だったんだ。
「…………どうすれば、良い」
今俺ができることで考えつくのは二つ。
魔法少女を殺し尽くせば、ナイトメアがこれ以上生まれてくる事は無い、のか。
「…………」
首を横に振って否定する。
俺は、目の前の彼女を殺したくない。魔法少女を殺したくない。
「これ以上」
魔法少女を生み出さないために。
魔法少女手術を行なっている病院設備を破壊し尽くそう。
幸い、俺は魔法少女契約に携わっていたから、どこの病院で手術を受けられるかをある程度は把握してる。
そこらを手当たり次第に壊していこう。
復旧するたびに壊して。
これから先に、これ以上の魔法少女が生まれないように。
「…………」
そうして既に存在してしまってる魔法少女も助ける。
「……自分が無茶なこと言ってるのにやっと気づいたのか?」
「…………そう、ですね」
「やり方を」
「変える」
「ん、ああ……おう?」
戸惑う彼女に「俺、行くので」と告げる。
「おい! やり方変えるってんなら教えろっての! オレも────────」
これは、魔法少女には打ち明けられない。魔法少女にこそ打ち明けられない。
その日、一つの魔法少女手術室を破壊した。
俺は自惚女から指名手配女となった。
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