第24話 苦しさとか、優しさとか
本当に、最悪だ。
俺はこんな事がしたかったんじゃないのに。魔法少女と戦いたくなんかないのに。俺があんな事を言ったからか。
「…………まだ、間に合う」
俺が言った事を信じるなら、俺の言葉の真意を届ければいい。
「俺は魔法少女と言うモノを否定してても」
魔法少女個人個人を否定したつもりは一切ないんだ。その事を分かれば魔法少女を否定する奴は居なくなるはずで。
ちゃんと、魔法少女にも届くはずなんだ。
「見つけた!」
魔法少女。
「アンタのせいで……!」
歪む顔が見えた。
「お願い、だから……俺の話を」
「聞いたら何! 私が否定された事実は変わんない!」
「俺は……」
「アンタの無責任な発言で! 私の存在が否定された!」
「……そんなつもりは、無かったんだ」
少女に睨まれて、俺は思わず後退りしてしまう。
「つもり……とか、どうでも良い。それでどうなったかが重要なんだよ!」
少女に殴られる。
痛みは、ない。肉体的に何かが欠ける事はない。でも、それ以上の何かがガリガリと削れるような感覚は確かにあった。
「否定された! アンタのせいだ!」
何度殴ってきても、表面には響かない。
「ごめん」
謝罪は届かない。
「……要らない。アンタの言葉なんか、私には少しも響かない」
「…………」
「これはただの八つ当たりだって、分かってる!」
家族にぶつける事もできない。友人にぶつける事もできない。無力な一般人に当たり散らすなんてできない。
だから、俺に来たんだ。
原因と言える、俺に。
「私の、魔法少女を……返してよ」
涙ながらに訴える。
「────ごめん」
それだけは、できない。
俺は。魔法少女の存在をこの世界から根絶したいから。
「大丈夫かよ」
ここ最近で顔見知りになってしまった魔法少女が俺に話しかけてくる。
「君は、良いの?」
「オレは……お前を殴りてえっては思えねぇんだよ」
憐れむような目を向けてくる。
「お前の意見に賛同はできねぇけどな。それでも、お前がどんだけ必死かは知ってる」
この少女も。
「…………」
さっきの少女も。
俺は。
「ああ……っ。ぁ、ぅ……っぐ」
助けたいと思った。
優しさも、苦しさも全部受けてしまったから。ナイトメアを生み出して死んでしまうかもしれない未来を変えないと。
「ナイトメアだ」
また、一人。
魔法少女が死んでしまった。俺はもう確信してしまった。あの男とのやり取りで。
吐き気が込み上げてくる。
「お前も行くだろ?」
「……当たり、前だ」
何とか喉まで迫り上がってきたのを飲み込んで、俺は走る。
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