第14話 俺たち病院組
どうしてか。
俺はまた病院に来ていた。今回は別に青木さんの付き添いとかじゃない。
「まさかやらかすとはなぁ……」
書類整理をしていた時に脚立を踏み外し、着地した際に足の指がグッキリいってしまったんだ。
会社には連絡を入れていて、今日は特別休暇と言うことになった。
嶋さんからも「本当、気をつけろよ」と注意されたし。
「我慢できないことはないんだけど……」
労災隠しとかってことになるかもしれないから。会社に迷惑かけないってことならちゃんと報告したし大丈夫。
「あ、すみません。労災です」
病院受付を済ませて待合席に座ってると、見知った姿が見えた。
「青木さん?」
「え……?」
また体調を崩したのか。
「あれ、何で穂村さんがいるんですか?」
気がついた青木さんが俺の方に来た。
「いや、足の指ポッキリやってね」
「そうなんですね」
青木さんは俺の隣に腰を下ろした。
「そう言う青木さんは?」
「あはは、体調不良です。頭痛とかふらつきが酷くて」
顔も赤い気がする。
熱っぽさもあるんだろうと思う。
「仕事、休ませていただきました。出来る限り早く回復して、他の魔法少女の方達に迷惑をかけないようにしたいです」
ふんす、と鼻息荒く青木さんが拳を握る。
「そうしてくれ。青木さんはウチの貴重な魔法少女なんだし」
魔法少女になるって北上さんが言ってくれてても、ウチに入るとは限らないから。それに入ったとしても一人だし。
「嶋さんもそう言ってる」
「……本当ですか?」
「本当だってば」
疑わしいものを見るような目を向けないでくれ。確かに青木さんには嶋さん出しとけば喜ぶとか思ってないこともないけど。
「よし。今日こそ嶋さんの声を聞かせてやる」
「え! ほ、本当ですか!?」
分かりやすくテンション上がってんなぁ。
「まあ、この前に話す機会をって言ったし。ちょうど良いかもだし」
「ならお昼ですね! わたしの方それくらいに終わると思います」
俺の方も多分昼くらいには終わる気がする。
「じゃ、昼な昼」
診察を受ける場所が違うからと青木さんは少し早足で行ってしまう。俺は呼ばれるまでスマホを弄って待っていた。
「────ヒビ入ってますね」
レントゲン撮って、また戻ってきて診断を聞いたところ、そんな感じだった。
特に固定とかはなく痛み止めをもらって今日は終わり。今度は来月に来るようにと。
時間は昼頃。
とりあえず、会社に連絡を入れて青木さんが来るのを待つ。
「あ! 終わりましたよ!」
「よし」
嶋さんと話すにも病院近くってのもあれだし、公園なら大丈夫か。
「よっ、と」
俺は公園のベンチに座る。
青木さんは隣に来る。
「もしもし、嶋さん?」
『お、穂村か?』
「足の指、ヒビ入ってました」
『おわー、マジか。会社は?』
「あ、でも明日から出れます」
『マジで無理すんなよ?』
「はい。あ、それで今昼ですよね?」
『そうだけど』
「嶋さんと話したいって人が居まして」
『僕と?』
俺は青木さんにスマホを渡す。
「も、もひもし!」
『はい、もしもし。嶋智宏です』
「ま、魔法少女の青木遥香です!」
『青木さん? あ、青木さんか!』
俺は青木さんに「飲み物買ってくる。何か欲しいのある?」と声をかける。
「いちごオレお願いします」
一旦、自販機まで行く事に。
これで少しは青木さんも嶋さんと二人きりで話せるはずだ。
「いちごオレ、と」
買い物自体直ぐに終わっても、しばらく待ってみる。この前、病院の付き添いで来た時もそうだったけど。青木さんって甘いの好きだよな。
「戻ったぞー」
青木さんが「嶋さんありがとうございました」と告げる。
『こちらこそ。貴重な機会だったよ。身体、大事にね』
「はい!」
そんなやりとりをしてから俺にスマホが返ってきた。
「いや、ありがとうございました」
『全然良いよ』
それじゃ、と通話が切れた。
「で、どうだった?」
「今日ほど穂村さんに感謝した事はないですね」
めっちゃ満たされた顔してる。
「嶋さんと話せてすっごい嬉しいです」
噛み締めるように青木さんは数秒目を閉じた。そして目を開いて立ち上がる。
「よし、頑張って体調戻さないとなぁ」
「医者からは?」
「まあ、問題なければ仕事して良いらしいですよ。ちょっとの間休ませてもらいますけど」
そこまで優れてないのか。
ちゃんと治るといいな。
「青木さん、気をつけて帰れよ」
まあ、俺も怪我してるからお互い様だな。
「穂村さんこそ!」
青木さんは俺に言い返して、歩いて行く。
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