第11話 これは家庭の味だろうか?
北上さんをどうするべきか。
見捨てるってのは絶対にない。
「逃げれ……ないよな」
俺の確認に目を伏せて「……はい」と答える。となると思いつくのは北上さんを連れて避難場所まで行くってのが一つ。
「もう一体のナイトメアも来てんな」
迷わずに俺の方に。
「……あの」
震える北上さんに俺は笑って。
「安心してください。俺の近くが今は一番安全なんで」
瓦礫が降って来ても何とかできる。
ナイトメアだって。
「さっきの光線とかで一瞬ですよ」
「はい……!」
地面が揺れる。
俺はさっきと同じ構えをとってマーシー・シャインをナイトメアに向けて放つ。光はナイトメアを飲み込んで、そしてまた何かが聞こえた気がした。
「ふぅ……それじゃ、他の人の所に行きますか」
ナイトメアがいなくなって平和になった道路を北上さんを抱えながら歩いて、避難場所に向かう。
「悠里!」
付いて直ぐに、美波は北上さんを抱えてる俺に近づいてくる。
「彼女、足を挫いてるので」
「そうなんだ……って、え!?」
「取り敢えずナイトメアは俺が倒したので、もう大丈夫です」
よし、俺は変身解除の為に何処かに隠れよう。あと、色々逃げたい。
「あ、あの!」
北上さんを下ろした後、美波が支えるのを見た俺は避難場所から出ていこうとして呼び止められた。
「はい」
「ありがとうございました!」
感謝されるってのは嬉しい物で「はい。無事で良かったです」と返して、俺はこの場を去る事にした。
「……ふぃいい、何とかなったぁ」
トイレで変身解除してしばらく、
俺はようやく家に向かって歩き始める。
「北上さんも足挫いたくらいで良かった」
『そうじゃな』
これで北上さんがどうにかなってたら、俺の心も折れてしまう所だった。
「ただいまー」
家の扉を開くと、美波が怒ってますよと言いたそうな顔をして迎えた。
「何処行ってたの!」
「や、トイレ行くって……」
「戻って来なかったのは!?」
「あー……トイレしてたらナイトメア倒されたってのを見て」
それで今悠々と戻って来たんだ、と言ったら腹を殴られてしまった。
「ごふっ……!」
「お兄ちゃんのバカ!」
「悪かったよ」
今回のに関してはどんな言い訳をしても、絶対に俺が悪いのは覆らないってのは自覚してる。
「何ともなくて良かった……!」
抱きついてくる妹に「俺も美波が何ともなくて良かったよ」と。
「そうだ、お兄ちゃん」
「どうした?」
「何であの人、ここに居たんだろ」
「何でだろうな」
適当に誤魔化そう。
下手なこと言ったら色々とボロが出そうだし。
「悠里の事助けてくれたみたいだし。悠里からも凄かったって聞いてさ」
「そ、そうか」
「私ももっと話してみたかったなぁ」
俺が黙り込んでいれば、玄関が開いた。
俺が振り返るとお出かけしてたらしい二人が立ってた。
「二人とも大丈夫!?」
母さんが俺たちを見てホッとしたような顔をして、父さんは「大我も美波も災難だったな」と。
「父さん達も無事で良かった」
父さんの腕にはエコバッグが。
「……皆んな無事だったって事で、今夜は焼肉だぞ」
家庭の味ってあるかな、焼肉に。
「今日ってお兄ちゃん帰ってくるから最初から焼肉の予定だったじゃん!」
美波が笑いながら言って、母さんも父さんも笑う。俺も一緒になって笑った。
まあ、美味いから何でも良いか。
「父さん、酒は?」
俺の質問に父さんはニヤリとしてエコバッグの中に手を入れる。そして缶のセットを持ち上げた。
「飲みすぎないようにね」
母さんからの注意を受けながら、俺たちは夕飯の準備を始めた。
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