第5話 若い頃ってのは無理しがち

 

 ナイトメアの対処が終わった頃。

 片岡さんは先に居なくなってしまった。一方、俺は青木さんが戻ってくるのを待っていた。

 

「あ、穂村さん!」

 

 青木さんは俺を見つけて走ってくる。

 

「無事でしたか」

 

 俺としては青木さんの方が心配になるんだけど。ナイトメアにぶっ飛ばされてたし。

 

「あれ、随分ボロボロだけど」

 

 青木さんの身体は砂埃やら何やらが付着している。傷もあるように見える。

 

「えへへ、ちょっとヘマしちゃいまして」

「……病院とか行く?」

「大した事ないですって」

 

 本人がそう言うのなら特に気にすることもないのか。ナイトメアと戦ってれば怪我をすることだって少なくないんだし。

 

「まあ、何かあったら直ぐに病院行くようにお願いしますよ」

「はいはい!」

 

 適当な返事をする青木さんを見てから、俺は会社に電話を入れる。

 

「すみません。穂村です」

『穂村! ああ良かった……そっちの方でナイトメアが出たって聞いたから心配してたんだぞ』

「嶋さんですか」

『青木も大丈夫か?』

「はい。多分ですけど」

 

 確認したところは。

 無理してるかどうかは俺には分からない。そのあたりは青木さんの事を信じるしかない。

 

『取り敢えず今日は大丈夫だ。僕が部長に伝えとく。そのまま帰っていい』

「え? 良いんですか?」

 

 そう言うのって嶋さんが判断する事じゃなくないか。

 

『ナイトメア災害に巻き込まれたってのと、会社への報告はしたって事で穂村は最低限の義務は果たしてる』

 

 だから気にするな、と。

 何だか怖い気もするけど仕方ない。ここは嶋さんを信用して。でも部長には取り敢えずメールを送っておこう。

 

「穂村さん?」

 

 俺がスマホをポケットに戻したのを確認してから青木さんが声を掛けてきた。

 

「電話、もしかして嶋さんでしたか!」

「そうだよ」

「良いなぁ……」

 

 羨ましそうな顔をされてもな。

 

「とにかく、嶋さんが会社の方には色々伝えてくれるってさ。俺たちはそのまま帰っていいらしい」

「さすがですね、嶋さんは!」

 

 多分この子は何やっても嶋さんを讃える気がする。

 

「ぁ……と」

 

 ふらり、と青木さんの身体が揺れた。危うく倒れると言うところで踏み止まる。

 

「大丈夫?」

「あはは、大丈夫ですっ!」

 

 空元気か、本当に問題ないのか。

 

「無理しないように」

「わたしたちは身体が資本ですから!」

 

 彼女は溜息を吐いて「ここ最近、妙に疲れやすいんですよね」と困った様な顔をする。

 

「そうなんだ」

 

 働きすぎだろうか。

 

「青木さんは魔法少女と女子高生の両立だもんな。よくここまで保ってるな」

「いやぁ、ちょっと前までは全然大丈夫だったんですけどね」

「そうなのか」

「まあ、穂村さんに言っても仕方ないですよね」

「……その通りなんだけどな」

 

 言い方を考えてくれ。

 まだ高校生だから仕方ない、か。

 

「そういう疲労が祟ってってのもあるかもだから、病院にはちゃんと行ってくれよ」

「分かってます!」

 

 俺も青木さんの立場だったら無理するかもしれないか。

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