第4話 オクト星人は地球人より遥かに優れておるのだ
「うひぃ、やってんなぁ」
ナイトメアに向けて幾つかの光弾が放たれているのが地上からも見える。俺はナイトメアに向けて走り続けていた。
まあ、そもそも何でか分からないけどあのナイトメアは俺の方に向かってきてたし。距離は段々と詰まって行く。
「青木さんがそのまま行けば倒せるかもだよな」
俺が引き付けておいて、その隙を青木さんが攻撃するってのも良いんじゃないか。
『お前さんが倒した方が早いじゃろ』
「それはそうだよなぁ」
『決定力もお前さんの方があるんじゃ』
それは理解してる。
この前のマーシー・シャインという光弾、というか光線を放った時にも。
俺の知ってる魔法少女の攻撃の威力を超えてる。それをホルトさんは『ホッホッホ、儂らオクト星人を舐めちゃいかんぞ!』とか言ってた。
技術力なのか、オクト星人とやらの特性なのやらかは分からないけど。
少なくとも人間が生み出した魔法少女よりはトンデモらしい。
「どうしたもんか」
ナイトメアのすぐ付近までは来れたけど、やっぱり青木さんは交戦中だし。万が一にもマーシー・シャインが当たったら蒸発しかねないぞ。
「そこの人!」
「え? 俺?」
魔法少女姿の青木さんが俺を見つけたらしい。
「早く避難してください!」
「いや、そのぉ」
逃げろと言われても、俺はナイトメアを倒しに来たわけで。片岡さんの為にも、俺は逃げ帰るわけにもいかないし。
「すまんけど、それに従うわけには行かなくてさ」
伸びてきたナイトメアの腕を受け止める。
「え!? 嘘!」
信じがたい光景だろう。
「あ、嘘!?」
俺が青木さんの方を見ると地面に叩きつけられていた。まるで蝿がはたき落とされた様に。
「青木さんっ!」
『待て! 先に倒してしまった方が安全じゃ!』
それに今射線に魔法少女は居ない。
ホルトさんの言葉にハッとした。
「確かに、な」
俺は右腕を突き出し、ナイトメアに照準を合わせる。
「よし、行くぜ。俺の究極奥義! マァアアアアシィイイイッ! シャインッッッ!!!」
光がナイトメアに向かって真っ直ぐに進む。完全にナイトメアの体を包み込んだ瞬間。ナイトメアが俺をまた見つめた様な気がして。
「────────ウ」
小さな声が聞こえた。
「てか、青木さんだよ!」
ナイトメアに吹っ飛ばされたけど大丈夫か。
「おーい! 青木さん!」
『正体隠すんじゃなかったのかの?』
「あ。おーい、青髪魔法少女ーっ!」
吹き飛ばされた位置は何となくだったから探し出すのに時間がかかったけど、倒れたままの青木さんを見つけて身体を抱き起こす。
「大丈夫ですか?」
「あなたはさっきの……そうだ、ナイトメアは」
「俺が倒しました」
「そう、ですか」
良かった、と青木さんが溜息を吐き出した。
「俺のせいですみません。ナイトメアに殴り飛ばされたのも、俺が邪魔したからで」
「いや違いますよ! わたしの油断です!」
取り敢えず無事で良かった。
「────いやぁ、素晴らしいです!」
ん?
「カメラ?」
「あ、はい。テレビ局の者です。お忙しい所申し訳ないです。ナイトメア被害という事でこれ中継なので」
ふむふむ。
『お前さん、今がチャンスでは?』
「確かに」
さあ、宣言しよう。
「ナイトメアは俺が何とかする! 取り敢えず詮索するな!」
「はい?」
あれ、なんか違った?
「えーと、登録名を聞いても……」
「セ、センサクスルナッ! さ、さらばです!」
よし逃げよう。
「追いかけるぞ!」
空の飛び方知らないんだよ、俺。
「お? 撒けた?」
気がついたら俺の後ろには誰も居なくなってた。身体能力が飛躍的に上昇してるのは分かってたけど。
「すみません、片岡さーん……」
ナイトメア退治を終えて、俺は何とか片岡さんのところに戻って来れた。人気のない公園の遊具の中。
「お帰り、待ってたよ」
「た、ただいまです」
「それじゃ外見張ってるから、変身解除できたら出ておいで」
俺は腰を下ろして変身を解除する。
「ぷふっ!」
外から笑い声が聞こえた。
気になって「終わりましたよ」と顔を出すと、片岡さんはスマホの画面を見せてきた。
『セ、センサクスルナッ! さ、さらばです!』
ええ、もうネットニュースなってんの?
早くね?
「めちゃくちゃ詮索されてるじゃん」
世の中は俺の思い通りにはいかないらしい。
「笑わないでくださいよ。俺だって必死なんですから」
「顔真っ赤だし」
「しょうがないじゃないですか」
色々あったんだよ。
「ごめんごめん。取り敢えず、今は大学の方に顔出して報告しに行こっか」
「そうですね」
会社にも報告しないといけねぇや。
大学に戻れば青木さんも来るでしょ。
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