第六章 蒐集としての小説
読むのだが、読まなくても集めたい小説がある。
昔はある作家の小説を読んでいいと思うと結構続けて読んだ。
数十年の過去にさかのぼると、たぶんだが最初に連続した作家は武者小路実篤だろう。
今は読む人がいるだろうか。
文庫で読んだ記憶があり、当時新潮文庫で結構出ていたのでそれをいくつか連続して読んだ気がする。
「友情」「愛と死」に始まり「馬鹿一」「真理先生」「お目出たき人」「棘まで美し」などは記憶にあるが、きっと文庫で出ている小説はほとんど読んでいる。
子供の読書は大人になってみると、一種狂気に近いものがあって、こうした作家を掘る行為が続くと、いくらでも読めるようになってしまうし、止められなくなる。
多分小学生までたどれば、江戸川乱歩やコナン・ドイルのシャーロックホームズ、ルブランのルパンは外せない所だが、これらは多分、近所に定期的にやって来た移動図書館で読んでいたので、購入はしていない。
後年、大人になっていくつか買って読み返した記憶はあるが、このころほどではない。
蒐集的に買って読んだ作家としては現代ものでは石坂洋二郎、時代劇では山手樹一郎が頭に浮かぶ。
多作な作家でないとこういう読み方はできないので、わりに有名でしかも文庫でたくさん出ていないとお金がないので、難しい。
小学校高学年から中学にかけて通った塾に行く途中に古本屋があったので、そこでだいぶ購入した記憶がある。
三島由紀夫は最初は家にある全集にあった「真夏の死」を読んだ記憶がある。そこではそれほど印象は強くなかったが、「仮面の告白」を読んで興味をもった。
当時の印象としては大家というよりは著名な現代作家のひとりとして読んでいた。新潮文庫でかなりあったが、代表作は後にとっておくような読み方をした覚えがある。
最後の方で「金閣寺」を読んで降参した。
なので、当時新潮文庫で出ていた小説は、ほぼ読んだ記憶がある。
個人的に好きだったのは「盗賊」と「沈める滝」だった。
夏目漱石や森鴎外、もっと後だと芥川龍之介、谷崎潤一郎、川端康成などは代表作はほぼ読んだが蒐集的とまではいかなかった。
今もそうだが、機会を見つけて読んでいる感じだ。
本として蒐集したものは、秋元文庫のSF系のジュブナイル小説である。
今のところ27冊ほど手に入れたが、以前手に入れて読んだもの以外はほとんど積読である。いっぺんに読んでしまうのがもったいないので残してある。
同様に朝日ソノラマ文庫にもほしいものがあるが、高額なので選んで買っているので蒐集というほどではない。
秋元文庫にある作品では、眉村卓の「謎の転校生」「地獄の才能」光瀬龍の「その列車を止めろ」福島正美の「真昼の侵入者」辺りが人気どころではないかと思うが、ほかにも当時活躍していた作家はいるので、見つけてそれなりの値段であれば手に入れるようにしている。
純粋に蒐集な意味で購入したのは「自選 佐藤春夫全集」である。
佐藤春夫の小説は読んでいるが、この本では読んでいない。
私にとっては若い子がアイドルのものやブランドものを買うような気持ちで買ったもので、並んでいるのを眺めているだけで嬉しい。
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