第20話 美緒~私の好きなヒト②~

気が付くと、崇斗と一緒にいる時より弟の陽斗と一緒にいる方が楽しいと思えていた。

陽斗の方が私を楽しませてくれる。だから気を許していた。相談もした。素の自分も曝け出した。


だから…流れでキスした瞬間から…止まらなくなったんだと思う。


陽斗は私を満たしてくれる。


ただ義務的にセックスをする崇斗とは対照的に、私を激しく淫らにさせる陽斗。私はいつの間にか陽斗を求めるようになっていた。


崇斗と会う時間より、陽斗と過ごす時間の方が多くなって…。でも…崇斗に別れを切り出す事も出来なかった。


弟に乗り換えますなんて…言えない。


だからズルズルと付き合っている。

きっと崇斗は私から切り出すのを待っていたのだと思うけど…。


そして、私は妊娠してしまった。


相手は崇斗ではない…だって…ずっとしていないから。父親は陽斗。


陽斗の子供を妊娠してしまったのだ。


当然だけど…崇斗に問い詰められた。私は全てを話した。きっと、これで終わりになると思った。


それなのに…崇斗は、私と結婚すると言い出した。自分が相手じゃないのに…。


でも、私もそれを拒否はできなかった。この子を生みたいと思ったから。


陽斗と私の子供…。


立場とか世間体とか考えると…崇斗と別れられなくて…陽斗に「アナタの子供です」とも言えない。

とにかく怖かった…。

浮気しているという状況が…何でもない他からの視線が私を責めているような気がして。


必死に平気なフリをしてみても…心が病んでいく。妊娠して精神的に不安定になっている影響もあったと思う。


結婚して…精神面も不安定で…出産しても気持ちが持ち上がらない。


だから、結局…陽斗に依存する。


多分、崇斗は私と陽斗の関係が続いていたことに気が付いていたと思う。

崇斗が優しい事が、こんなに拷問になるなんて…苦しくて仕方がない。


お願いだから…私を捨ててほしい。心底そう思った。

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