第14話 不謹慎な…

「事故は二人のせいじゃないわよ」


リビングのドアを開けておばさんが入ってくる。どうやら話を聞いていたらしい。


「二人は何も気にしなくて良いのよ…。あの二人の関係は…あの二人のもの、崇斗や芽衣ちゃんには関係ない。

きっと事故さえなければ…二人が責任を感じる事もなかったはずよ」


おばさんは優しく微笑みかけてくれた。


「芽衣は気にしなくて良い。何も悪くない。

俺が優柔不断だっただけだから…」


崇斗も私に優しく笑いかけてくれる。


「俺は全て打ち明けてスッキリしたかっただけだし、正直離婚するつもりだったから。優斗を本来の両親のもとで暮らす方が良いと思ったし…」


崇斗の言葉で空気が重くなる。

私はふと、優斗の事に頭が働いた。


「優斗…本当の両親…亡くした事になるの…ね…」


今はまだ事実を知らないから良いけど…大きくなった時にショックを受けるに違いない。


「俺が優斗を育てるから…父親は俺で、事実は教えても教えなくても…良いと思うけど」

「まぁ…そうね…。真実は私達だけが知っていれば…。

でも崇斗、再婚する事があった時に優斗が邪魔になる事はない?」


おばさんは心配そうに崇斗を見た。

実の子供じゃない優斗を連れての再婚はリスクがあるのではと、懸念しての言葉だろう。


「邪魔に…なる?芽衣」

「え?」


崇斗は私に質問してきた。私は意味がわからず首を傾げる。


「あ、なるほど。なら、大丈夫そうね」


おばさんは笑いながら、その場を去った。

それを見送ると崇斗は私の方に向き直る。


「今、こんな事を言うのは不謹慎かもしれないけど…芽衣」

「はい!」


真剣な表情の崇斗にドキドキする。


「近い将来、俺と結婚して欲しい」

「え?」


突然に申し込みに驚きを隠せない。


「いきなり結婚と言われても…付き合ってもいないのに?」


嬉しいし幸せを感じるけど、唐突すぎてピンとこない。


「だから、交際の先に結婚を視野に入れてくれって言っているの」


崇斗は照れくさそうな素振りを見せる。


「優斗の母親に…一緒にあの子を育てて欲しいし…芽衣に俺の子供を産んで欲しい」


私は黙ったまま崇斗を見つめる。


「芽衣とずっと一緒にいたい」

「私も崇斗とずっと一緒にいたい」


嬉しくて涙が滲む。


「本当に不謹慎だね」


私は苦笑いをしながらも、幸せを感じていた。




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