第13話 自己嫌悪

「最初は気持ちのすれ違いが寂しくて出来心だったらしいけど…いつの間にか本気になってしまったらしい。

俺の目を盗んでは密会して…逢瀬を重ねていたらしくて…優斗ができた時、俺は身に覚えないから責めてしまって…この事実を知った」


だから…美緒さんは優斗を妊娠した時から精神的に不安定だった?


「恋人の弟と関係をもって、妊娠したなんて立場的に悪いと思ったし…寂しい思いをさせてしまった俺の責任もあると思って…結婚する事にしたけど…ウマくいくわけないよな。

美緒は情緒不安定になりながらも…陽斗に安らぎを求めて…先週まで…関係を続けていたんだから…」


私は強く崇斗を抱きしめた。


本当は崇斗だって辛いはずなのだ。愛情のない結婚生活を崇斗は耐えていたのだ。


私は前に陽斗が言っていた言葉を思い出した。


『崇斗は世間体だよ。というか…崇斗と芽衣ちゃんにくっついてもらいたかったのに…』


「笑えるよな…死んだ美緒のオナカに…二ヶ月に入ったばかりの子供がいたそうだよ」

「崇斗」


私は涙を堪えた。私が泣いても仕方がない。私が泣けば同情になってしまう。


「自分の子供じゃないのに…父親って…正直寂しく感じたりしてさ…。自分の子供も欲しいと思ったけど…美緒を…陽斗を愛している美緒を…抱く気にはならなかった」


つまり…死んでしまったオナカの子供も…陽斗の子供という事なのか。


崇斗は愛情に飢えているのかもしれないと私は思った。先日、私に見せた弱い部分はそういう事だったのだ。


私…自分が情けない…。


「ごめん…私のせいかもしれない…。私がずっと…崇斗に片思いしていたの…陽斗は知っていたから…。

陽斗言っていたもの…私と崇斗にくっついて欲しいって…」


誤った道を進んでしまったのだ。陽斗は略奪という道を突き進んだ。

美緒さんを自分に振り向かせて崇斗と別れさせようと考えたのだろう。


私と崇斗が自分の心を素直に見せれば…陽斗的には上手くいく筈だったのだ。


もしかしたら陽斗と美緒さんが結婚していたかもしれない。


「私のせいだ…」


後悔で心が押しつぶされそうだった。

この感覚を崇斗はずっと味わってきたのだと思うと申し訳なくて顔を上げられない。


涙が溢れて止まらない。







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