第12話 真実

―1週間後―


陽斗と美緒さんの葬儀も終わり、日常が戻ってくる。

崇斗も仕事に復帰し、優斗は私が勤める保育園に入園する事になった。


家族で暮らしていた家を引き払い、実家に戻って来た崇斗親子。

優斗は1歳半という年齢の為、母親が事故で亡くなった事を理解できていない。

それが幸いなのかどうなのか…何ともいえない。でも、明るく過ごすその姿に安堵する大人達だった。


夜中、まだ起きていた崇斗に窓越しで声をかける。


「崇斗…私…どうして欲しい?力になれる?」


優斗の前では平気な崇斗だが、一人になると何かを考え込んでいる様子だった。


「…同情なら…いらない」


崇斗はイラつきを見せていた。何かを抱え込んでいるように私には見えた。


「そっちに行っても良い?」


崇斗は無言で頷いた。


私は静かに家を出るとお隣に行く。玄関に到着すると崇斗が出迎えてくれた。

家の中は静かで、他の人達は寝ているのだろうと思われた。


静かにリビングに入ると、ソファーに腰をかけた崇斗の隣に座る。

私はそっと崇斗の手に触れる。どうしたら良いのかわからなかったから。 

何をしても、今の崇斗には同情の様にしか感じないのではないだろうか…。


そう思うと、ただ触れるだけしか出来なかった。崇斗は虚ろな目で私を見た。


何となくだが、崇斗が今求めているものは結びつきの様な気がした。

すると崇斗は私を力強く抱きしめてきた。


「俺…自分を誤魔化し続けていた…」


耳元で声を震わせながら呟く崇斗。私はその声に耳を傾ける。


「芽衣に惹かれながら…美緒の気持ちを無視できなくて…何となく付き合っていた」


私に惹かれていたという言葉に驚きながらも話の続きを聞く。

今、そこは重要ではない。


「でも、美緒も気が付いていたみたいで結婚前には心が他の男に移っていて…浮気していた」

「…知っていたの?浮気していた事…」


私はその事実に驚き、崇斗は苦笑いをしていた。


「言っただろ、二年半…」


私は事故の当日の事を思い出す。

崇斗は二年半ほど奥さんと関係をもっていないと言って、私は違和感を抱いたのだ。


「優斗は…崇斗の子供ではない…って事?」


崇斗は頷いた。


「崇斗に似ているのに…違うの?」


私はハッとした。

私が何かに気が付いたのを察した崇斗は言葉を続けた。


「陽斗の子供だよ」


あまりの衝撃に言葉が詰まる。

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