第7話 確認
陽斗は昔から人懐っこくて優しい一面があったりもしていた。道を外したのもただ、好奇心が旺盛なだけなのだ。
「それよりも陽斗でしょ。おばさんが、そろそろ落ち着いて欲しいって言っていたよ?」
「それは無理。だってまだ、相性の良い女と出会ってないし」
「相性って?なんの?」
私は窓に近づいて陽斗と会話を続ける。
あの時の事に触れるのは嫌だけど、話をするのは楽しい相手でもある。
そんな私達を見ているから、おばさんも結婚して欲しい的な事を言ったのかもしれないと何となく思った。
「色々。そうだな…例えば…エッチとか?体の相性良くないと夫婦生活は無理でしょ。何度もしたくなるような相手じゃないとダメじゃね?」
陽斗は真剣な顔を作る。
「ふーん。体の相性ね…。じゃあ私は除外だよね。おばさんに陽斗の結婚相手に、って言われたけど、何度もしたくなるような相手じゃないし」
私は淡々と言った。
とにかく陽斗は私の将来の相手ではないと自分で確認したかった。
陽斗にもその気が無いという事を確信したかったのだ。
「何で芽衣ちゃんが除外?」
陽斗は不思議そうに私を見た。それに私は少し戸惑う。なんで疑問系?
「…だって、何度もしたくなる相手じゃないでしょ?私」
アレ以降はないし。
「そんなの、シてみないとわかんなくね?」
私は陽斗が何を言っているのか理解出来なかった。
「してみないと…って…したよね?私の成人式の日に」
触れたくない事にあえて触れる。
陽斗が覚えていないなら、私も無かった事にしようと少しだけ思ったりした。
無かった事に出来るのなら、したいのだ。
「何?芽衣ちゃん覚えてないの?」
「何が?」
「あの日、芽衣ちゃんがエッチした相手は俺じゃなくて…崇斗でしょ」
ニヤニヤて笑う陽斗。なに?
「え?」
何の話?
陽斗の思いもしない発言に思考が固まる。
「俺が家にいるのを知らないでさ。二人が激しいから…ごめん…覗いちゃった。超、興奮したんだけど」
「は?」
私は頭が混乱していた。陽斗は今、何と言った?
「芽衣ちゃん、もしかしてお酒で…記憶ない?」
陽斗は驚いた表情で私を見た。
「いや…した事は覚えている…けど…」
私はシドロモドロ答える。
「崇斗が私を相手するわけがないと思っていたから、陽斗かと思っていたけど…違うの?」
私の言葉に陽斗は面白そうに笑っていた。
「試してみる?実際にしてみたら、相手が俺じゃないって納得できるかもよ?」
「…遠慮するよ…その言葉で十分理解した」
私は大きく溜息をついて、顔を手で覆う。忘れ去ろうとしていたあの日の事を思い出す。
夢のような甘い時間。
私がお酒の力で普段出来ない行動をとれたから…。
甘えてみたくて甘えた。触れたくて触れた。
陽斗を(実際には崇斗だったけど)崇斗の身代わり、崇斗だと思い込みながら。
…なんだ?それ…本当に?
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