第2話 解釈

いつも歩く道の傍らに、泥酔した男を見た。

乱れたスーツではあるが、それなりに値の張る仕立服に見える。

その男に気付いているのかいないのか、人々は通り過ぎていく。


「もしもし、こんなところで寝ていると、風邪ひきますよ。」


「おっさん、通行の邪魔だから、起きろ!」


などという時代は過ぎ去った。

異質な事件の繰り返しにより、治安国家たるプライドは崩れ去っているのだ。

当たらず触らず、他人とかかわらず。

それが今の日本には、似合うようになった。


「知らないおじさんに声かけられたら逃げるのよ。」


その言葉が何を意味するのか?


「犯罪。」そして「法律」


「しがない世の中だ。」


と嘆く者もいるが、もともと、日本に法が出来た時から、人は法によって動かされている。

会社勤めには、労働基準法があり、ショッピングを楽しむ人にも所有権がある。

車を運転するドライバーには、道路交通法など、人々は、その法に従い、外れることは罪だとしている。

過重労働は、御法度であり、商品を盗んではいけない。スピード違反も処罰される。






「俺はなぜ裁判を受ける羽目になったのだろう?」


円上は倒れ込んでいる泥酔者を見るともなしにその場を去った。







7月初め、福岡県北九州市。


端留はしとめ弁護士事務所、午後1時半。


「裁判長を起訴するとは驚きました。何か、あの裁判で不審な点でもありましたか?」


「はい、裁判長の訓示というか、話を聞くうちにい私には被告人としてしか見ていない人間の弱い心のわだかまりを感じました。」


「蟠り…」


「そうです、裁判というものは真実をあらわにし、その事例を鮮明に表し、法に照らし合わせて、罪として認めさせる、そう私は捉えています。」


「なるほど。」


「しかし、この裁判では、裁判長の憲法理解が優先されて、そもそもである人間の生命の保守という基本を見失っている気がしてならないのです。」


「生命ですか。」


「そうです。日本国憲法は、アメリカに仕組まれた法律から日本人を守る法へと舵を切り、生命の、詰まりは日本人の命を守り生命の増勢を目指したものと思っています。日本人を沢山増やして、世界に日本という国を強調したい。こんなにいい人種なのだと証明したいという文言に思えているのです。」


「それで生命保持に対して裁判長は生活を脅かし、円上さんの生存を妨げていると?」


「はい。・・・無理があるでしょうか?」


「いえ、私は弁護士です。被害を受けたと考えている人にそれは違うという意見を言う権利はありません。ましてや、裁判をしない方がなどと商売っ気を出す気もありません。」


「私をおかしな人間だと思いますか?」


「いえ、この日本の法や、行政に違和感を持つ人はたくさんいます。この事案が、この国を変えることになるかもしれませんし、国は国民が作るのですから、法律家一人の考えに甘んじる必要もないと思います。私にどこまでできるかわかりませんが、やれるだけのことはやりましょう。」


「有難う御座います!」


円上は、こうして裁判長裁判という前代未聞の審議に挑むことになった。



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