第4話:失った写真

三浦海岸の祖母宅に夫を初めて連れて行った日、

祖母は祖父と結婚に至った際の「自分自身のお見合い写真」を出して

自慢げに私の夫に見せていた。

祖母の祖母(私の高祖母)の横で、凛と立っている祖母。

10代後半の祖母は着物姿で、ふっくらとしてとてもかわいかった。

最もお気に入りの一枚だったのだろう。どうしても私の夫に見せたかったらしい。

私の夫が「祖母のど真ん中のタイプ」だったのは、すぐに分かった。

「もっとずっときれいな写真だったんだけど、色が褪せちゃってね…」

そう言って、ほんとはもう少し綺麗に見えるはずなんだけれど…と不満げだった。


祖父と祖母は遠い親戚だったらしい。

祖母の祖母(高祖母)の妹が、祖父の母(曾祖母)?だったようだ。

昔はそのような繫がりで結婚することが多かったのかも知れない。


「おじいちゃんの写真を失ってしまったのよ…」

祖母はお見合いの時に交換した祖父の写真を失くしてしまったことを、とても悔いていた。

「失ってしまった…」

そのちいさな言葉に、後悔の濃さが滲んでいた。


祖母が亡くなり、思い出の詰まった三浦海岸の家がなくなった。

すこし時間がたった今、

あぁ、失ってしまったんだなぁ、と思うときがある。

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