第二十四話 黒く陰湿な視線
宴の中ずっと、
いっしょに演奏をすませると、二人は同じ部屋の中に入ったまま出てこなかった。
……二人きりで何をやっているんだ! 出てくるがいい。
帝の妻は
ないがしろにしおって!
当の鈴子は、女房たちになだめられながら、お人形を持ってとりあえず宴に参加したようだが、途中で眠くなってしまい、今では眠りこけてしまっているとのことだった。
鈴子がもう少し、ふつうのおなごだったら……!
いや、違う。
そもそも、先帝である
右大臣家出身で宮家の血筋のおなご。……中宮の位まで授けおって。
確かに、垣間見た姿は、
だけど、私の妹
なぜ、藍子ではいけなかったのか?
救いは、数回のお渡りで藍子が妊娠し、無事に男子を出産したことだ。これで藍子に子どもがおらなんだら、目も当てられなかったわ。
男子でなくてよかった。
おかげで、皇太子となり東宮になったのは、藍子の息子
――しかし、このままではいけない。
もし、
今、月姫の評判はとても高い。
もともと人気が高かったが、この間、呪術の
いまいましい。
……いっそ、殺してしまえばいいのに……
そう、黒い思いを抱いたとき、
「
「父上、目の焦点が合っていません。……それに」
「それに、心の中の声が外に出ていますよ、父上」
「……そうか……」
「そうですよ。今日はもう、屋敷に戻られてはいかがでしょう?」
「だけど、帝と月姫が」
「その件は、私が何とかしておきますから」
「そうか?」
「そうですよ。
――全く。
ぶつぶつと危ないことを口走るなよ。冷や汗が出たよ。
幸い、周りが煩かったから聞き取れた者はいないだろうし、万が一聞こえたとしても、意味はよく分からなかったであろう。それにしても「殺してしまえばいいのに」はまずい。まずすぎる。
月姫め。
何しろ、彼女に和歌を送っても文を送ってもつれない返事しか返ってこないのである。
何が、月光る姫だ。
氷のように冷たい女ではないか。
私が籠絡出来れば、最も無難にことが運ぶかと思ったけれど、駄目ならば仕方がない。
もう、手段を選んでいる暇はないのだ。
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