第二十話 狙いは何だ?
「きゃっ!」
「どうしたの?
「月姫さま、これ……!」
「かしてごらん」
「え、でも」
「大丈夫だから、くれる?」
「は、はい、月姫さま」
……くだらないわ。
〔
月姫の手元で呪術の
「終わったわよ」
「……月姫さま……ありがとうございます! すみません、取り乱してしまって」
「それはいいのよ」
呪術を信じている人間にとっては、あれは恐ろしい凶器でしかない。
……しかし、誰を狙ったのだろう?
帝? それともあたし? 或いは両方?
でも、あたしが呪術の
それなのに、今さらここに呪術の
「……いったい、どうして?」
考えにふけっていた月姫がそう呟くと、「それは呪術そのものに意味があるのではないと思うよ」という声がした。
「
月姫が振り返ると、
「
月姫は、あの日帝に抱き締められて以来、帝を見ると条件反射で頬が赤くなるのであった。……今日もお会い出来て、嬉しい。
「
さっきも、ふつうの女官ならば、呪術の
「月姫。お前に呪術の
「はい、お兄さま」
「それでも、今、呪術の
「つまり、内通者がいる、と」
「内通者というか、手引きする者がいないと、出来ないだろう」
「……そうね」
月姫は使用人たちの顔を思い浮かべた。
宮中に来て半年くらい経つので、人の入れ替わりもあった。全員を細かに把握しているとは言い難い状況にある。
「月姫。今まで以上に警備を万全にさせて欲しい」
帝が言い、
「それから、
「
「かしこまりました。内通者を探し出せばよろしいのですね?」
「出来れば。――ただ、危なくなりそうであれば、俺たちに託して欲しい。そして、出来るだけ、本当に信頼出来る人間だけで、固めて欲しい」
「かしこまりました。お任せください!」
「……
帝から声を賜り、
帝はその様子を満足げに眺めると、今度は月姫に向かって言った。
「月姫。あなたが呪術の
「……はい、帝」
桂城帝の手が、軽く月姫の頬を撫で、月姫は心臓がばくばくした。
きゃあ! 手が! 帝の手が、あたしの頬に触ったわ‼
帝は月姫のそんな様子を見てくすりと笑い、今度は頭を撫でて、「危ないことはしないように。いいね?」と念を押した。
「はい」
月姫は恥ずかしくて、消え入りそうな声でそう答えるのが精いっぱいだった。
先日、桂城帝の御寝所で呪術の人形を見つけたとき、帝をお守りするんだ! と決意を固めたはずなのに、帝の手で撫でられただけて、なんだか甘く溶かされてしまう。
恥ずかしくて、帝の顔を見ることさえ出来なかった。
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