第十話 桂城帝の気持ち
「
「……
「はい、帝」
「あのように美しい姫がいるのだな……」
よかった、と
黙っていたので、もしかしてお気に召さなかったのではないかとふと不安になったのだ。
「では、次は
「よろしく頼む。その前に私は月姫に和歌を送りたい」
「かしこまりました」
夜のことも、結局は何もないままだった。
何しろ、鈴子はさっさと眠ってしまったのだ。健やかな寝息を立てて。
その、だらしない寝姿にも興ざめをした。
耐えて、ともかく三晩は一緒に眠ったが、ただ添い寝をしただけで終わった。そうして
鈴子の周りの女房たちは事情を全て知ったうえで、真実を告げず黙っているのだ。
それはそうだろう。
真実が露見したら、
……しかし、と
あれでは女房たちが気の毒だ。
反応がほとんどなく、言葉も発せず、人形遊びばかりしている。
はあ、と
鈴子のことで心が折れる思いをしたが、鈴子の女房たちの中に、
童女のような鈴子も、鈴子の周りの女房たちも気持ち悪くて、
そのような中、父
「帝、月光る姫はいかがでしたか?」
「母上」
何事かあると、
母上は
「月光る姫は……月姫は、とてもすばらしい方でした」
「そう、それはよかったわ。わたくしもお会いたいこと」
「今度、
「楽しみにしていますよ」
と
「そう言えば、もうすぐ
「そちらも楽しみですね」
「ええ。きっと、月姫さまも楽しみにしていらっしゃると思いますよ」
豊かな髪はさらさらと流れ、黒曜石の大きな瞳は私を捉え潤みを帯びていた。桜色の唇から零れる声は鈴の音のようであった。
会いたい、と思った。
またすぐにも会いたい。
わが恋は
(私の恋は幾重にも重なり、この宮中に満ちていることでしょう。思い草を見て、あなたへの思いを確かめて過ごしているのです。)
月姫も和歌を返した。
美しき桂の眉の君なれば会ひ見て後は色に出でなむ
(三日月のように美しい眉のあなた。とても恋しく思っています。お会いした後は、この思いが表に出てしまうのではないかと不安になるほどです。)
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