第九話 顔合わせ――[魅了]が効かない!
通常であれば、嫉妬されるところであるが、そもそも月姫は月の光とともにこの世界にやってきたという神秘の生まれであり、神さまの使いであると皆が認識していたこともあり、妬みよりその美しさを崇めるような反応ばかりであったのだ。
「まあ、なんという美しさでしょう」
「月の光のよう……! 癒されるようですわ」
「なんと有り難い輝きなのかしら」
月姫はにんまりしながら、月姫を見ようと集まった
しかし、ある場所を通りかかると、賛美とは異なる声が聞こえた。
「月光る姫だなんて、図々しい!」
「何よ、
「そりゃ、
月姫は、ははんと思った。
なるほど。
これが、
月姫はふっと息を吐くと、目に力を入れてそちらを見やった。
[
あたしは敵じゃないわよ。悪意を向けるのは止めなさい。
一瞬ののち、月姫に対する悪口は止み、今度は賛美の声が聞こえた。
「……でも、本当に美しいわよね」
「そうね、輝くばかりだわ」
「月光る姫さま……ああ、私もあちらにお仕えしたい!」
うんうん、そうよね。
月姫は満足げに頷き、その声の方に向かってにっこりと笑顔を向けた。すると、
「あの美しい笑顔、女性でもくらっとするわっ」
などという声が聞こえ、月姫はふふふと思いながら、歩みを進めた。
「月姫さま。月姫さまの美しさに、鈴子さまの女房たちも圧倒されておりますわ」
「ふふふ。そうね」
月姫は再度自信に満ちた美しい笑顔を
そのようなわけで、月姫の美しさは瞬く間に宮中を駆け巡った。
やっぱり[
月姫は心の中でガッツポーズを作った。
「月姫! うまくやったな!」
父親である左大臣
「月姫さまは大変すばらしかったですわ!」
「ところで、月姫。
「まあ、嬉しいわ」
月姫は
愛ってよく分からないけど、イケメンは好き。
そうそう、任務のことがあるから、帝に[
その日、月姫が
「左大臣がここにいると聞いてね」
うわー、声もかっこいい!
そう思いつつ、月姫は声の方を見た。
……かっこいい! 好みのタイプっ。
月姫はそういう内心を隠し、いつものように艶然と微笑んだ。
「そちらは?」
十分承知しておきながら、帝は
「私の娘、月光る姫でございます。月姫、とお呼びください」
「それはあの、即位の礼のときの姫?」
「さようでございます」
「……
「月の光とともに現れました、神さまからの使いでございますから」
「月姫。そなた、私の手のひらにいたことを覚えていますか?」
帝はふいに月姫に話しかけた。
月姫は
「……何か、温かいとても安らぐところにいた気がします」
本当はばっちり覚えているんだけどね。
とりあえず、こう答えておこう。
それにしても、
そんなことを思いながら、月姫は胸を押さえた。
「宮中での暮らしはいかがですか? 何か不自由はありませんか?」
「ないです。皆さん、よくしてくださいます」
[
そうだ。
帝にも、使っておこう、[
月姫はそう決意し、帝の美しい瞳をじっと見た。
さあ、あたしのことを好きになって!
「では、何か困ったことがあればおっしゃってくださいね」
帝は月姫にそう言うと、「左大臣」と
あれ?
おかしいなあ。ふつう、[
「月姫、ではまたお会い出来る日を楽しみにしておりますよ。今度は、あなたが得意だという
――やっぱり。
絶対に、[
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