第六話 宮中へ行くことが決まりました!
「
「月姫、
「いやいや、
月光る姫――月姫はうふふと笑いながら、兄たちの顔を見比べた。
[
「
「お母さま」
月姫は淑子が大好きだった。
淑子は常に優しく慈愛を持って、月姫に接する。
月姫は――第一階層の管理者である
それが、ここはどうだろう?
月姫は淑子に頭を撫でられ、なんとも言えない温かい気持ちで満たされるのを感じていた。淑子の視線は優しく、こんな視線は[
三人の兄たちも優しかった。
月姫は兄たちのことも好きだった。きょうだい、というものの存在を知識としては知っていた。しかしここで、知識じゃないところの本当の意味を初めて知った。
それにしても、と月姫は思う。
第一階層の住人は
なんて、非効率なの! 役に立つまでに時間がかかり過ぎてどうしようもないじゃない!
だけど。
「でも、母上。俺たち、まだ月姫が小さな女の子に思えて仕方がないんです」
と
「そうです。何しろ、まだ
淑子はにっこりと笑うと「そうねえ。わたくしも不思議な感じがしますよ。月姫はついこの間まで、本当に赤子だったものね。……でもね、今の月姫をご覧なさい」と言った。
三人の兄たちは改めて、月姫を見た。
月姫は輝くばかりに美しく、もう幼女ではなく結婚が出来る女性に成長していた。
「ああ、本当に美しい」
「輝くばかりだ」
「月の光のようだ。まさに、月光る姫」
兄たちの称賛を受けながら、月姫はこういう感じ、悪くないわ、と思う。
長い時間をかけて、しかも人の手で育てられるのは全く効率的じゃないけれど、なんていうかずっとかわいがってもらっている感じがして、とても居心地がいい。あたしは
「あなたたち、殿の、
淑子に言われ、
「お母さま?」
月姫は一人きょとんとして、淑子を見た。
淑子は娘を優しく見やると言った。
「月姫、帝からの文にはお返事をしましたか?」
「はい」
月姫は、
帝からの文、素敵だったわ。帝は顔がいいだけじゃなくて、中身も素敵なのね。ふふふ。
だから、あたし、頑張ってお返事書いたの。筆を使うのは慣れなかったけれど。
淑子はにっこり微笑んで言う。
「よかったわ。……月姫、聞いてくれますか?」
「はい」
「月姫は、今度宮中に出仕することになりました。
「え?」
えーと、
「しっかり頑張るのですよ。宮中の
「お母さまは一緒に来てくださらないのですか?」
月姫は寂しく不安になった。この第七階層で、常に月姫のことを慈しんで来たのは淑子だった。
「……ええ。だけど、月姫の仲良しである
「はい。月姫、心配しなくても大丈夫だよ」
「はい、分かりました」
「
「はい、お母さま! あたし、頑張ります」
淑子と離れることへの不安はあったが、月姫は
これまでちらりと姿を見かけることはあったけれど、ほとんど文のやりとりしかしてこなかった。
何しろ、相手は
でも、宮中に行けば会えるわ! 何しろかっこいいよのね。ふふふ。
月姫は心の中でガッツポーズをつくった。
月を見ながら、月姫は第一階層の
『っていう感じでね、あたしちゃんとやっているわ。あ、[
[
『ふむ、なるほど』
『あ、でね、
月姫は興奮したように言う。
『……お前、任務を忘れているんじゃないか?』
『忘れてなんか、いないわ! 観察でしょう? 第七階層第八エリアの』
『それから、審判もある』
……審判。
『分かっているわよ』
『宮中に行くならちょうどいい。第七階層の第八エリアの政治をよく観察してくるがいい。未熟ではないか、腐敗はしていないか』
『分かっています』
月姫は通信を終えると、月を眺めた。
月は少し欠けて、十六夜の姿で月姫を照らした。
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