2話 アプローチ
スッキリとした気分も、あの時だけだった……。それから、何かあると先生は事あるごとに、呼び出し、指名をして来た。更に、勝手に助手という掛かりまで作って任命をされてしまった。
なに助手って……? 勘弁してよ。付き合ってる時よりも、先生のアプローチというか、積極的なんですけど……。未だに素っ気ない態度でやり過ごしているけれど。先生の笑顔や楽しそうに話す顔を、見てもドキッともしないし。
授業の準備室に、先生に呼び出された。授業準備室に入ると、授業で使う教材や備品が並んだ部屋で、あまり掃除をしている感じがない。先生がスチール棚に並んだ教材を、部屋の真ん中のテーブルに置いていく。その並べられた、授業教材を私が持てるだけ持っていると、先生に声を掛けられた。
「ヒマリ、今日は空き教室に来ないか?」
「行きません。用事はありませんし……必要ありません」
先生が空き教室に誘って来たが、興味が無いのでキッパリと断った。
「先生は、あるんだけどな……」
「用事があるなら、ここでどうぞ。何ですか? 聞きますよ?」
貴重な昼休みの時間を、無駄に過ごしたくないし。話があるなら、ここで言ってもらった方が良い。空き教室まで行く必要は無いでしょ。どうせ、大した話をする訳じゃないだろうし。他の生徒が聞いても、問題があるような話をした記憶がないし。強いて言えば……「私達付き合ってるんだよね?」という話題の時だけだと思う。
そんな事を考えていると、先生が移動をして……部屋に鍵を掛けた。私の方を見て私が動揺をしているのを見て、慌てて説明を始めた。
そりゃそうでしょ。何で鍵を掛けるのよ!? え? 先生……何をする気なの?
「いや、違うんだ。出て行きたかったら出てけば良い、先生は止めないし。話の最中に、他の生徒に邪魔をされたくなくて鍵をかけただけだ」
あぁ、そういう……事ね。ビックリした……キスでもされちゃうのかと思ったよ。最近の先生は、積極的だったから……
「あのな、考えたんだ……。先生もな、ヒマリと二人っきりでまた、話をしたりしたいって思ってな。それで考えたんだ……その話し合いを空き教室でしようかと思って誘ったんだが、どうだ? 来てくれないか?」
今更?、もう終わったんだよね……先生を想う気持ちも無いし。完全に終わったんだよね……どうでも良いって思っちゃってるんだよ、先生。
「行きませんよ」
「……何が問題なんだ? 教えてくれ。先生直すから!」
「今更ですか? 何度も話しましたよ。まだ分かってないなら……先生も、私に興味がなかったって事ですよね」
「あの時は、ヒマリを大切にしようと思っていて……ヒマリの意見も聞かずに、勝手に大切にし過ぎていたと思ってる」
それを、あの時に言って欲しかったな。もう遅いよね。放っておいて欲しいって気持ちの方が強いもん。また、何度も同じ話をされても迷惑だし……最後に話だけでも聞いて断ろ。
「分かりました。最後の話し合いですからね、最後ですよ」
「分かった。ありがとな」
昼休み……
空き教室に行くと、既に先生がいつもの席に座り緊張をした表情をして待っていた。
何で……緊張をしているの? 私と話すから? ……どんな内容を話すんだろ? 私も緊張をしてくるじゃんよ……
教室へ入ると、先生が立ち上がり近寄り目の前で立ち止まった。
「ヒマリ……わ、悪い、気持ちが抑えられん……」
そう言うと抱きしめられた。
え? は? あの……なにその一方的なハグ? というか、抱きしめるって。私、許可も同意もしてませんけど!?
「せ、先生。それ……セクハラ! や、止めてください……もお」
気付けば頬が赤くなり、鼓動も早くドキッ!とした気持ちが蘇ってきていた。もお……やだぁ……先生のばかっ! せっかく忘れていたのに!……この気持ちぃ。
先生に、初めて抱きしめられて力が抜けフワッと、心地よい気持ちになってしまった。
わぁ……先生の匂い……好き。それに先生の力強い体の感触だぁ……素敵。
抵抗はしたものの始めだけで、先生にお任せ状態で身を委ね……自分も気付けば先生の背中に腕を軽く回していた。
「先生を……許してくれるか?」
この状態で、耳元で囁かれて……イヤと言える? 嫌いな人だったら言えるけれど、好きだから付き合っていたんだよ。必死に忘れようとしていたのに……
「……うん。良いよ……許す、許しますよぉ。もお」
頬を膨らませて、ムスッとした表情をして答えた。すると頬を膨らませていた頬に、先生の頬を着けられ……ムニムニと私の頬の感触を楽しんでいるように感じた。
な、なにしてるの? え? うぅぅ……なにこれキュンとしちゃう……先生……それダメ……はぅ。先生、分かったから、ねぇ……分かったから止めてぇ。
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