第7話 サメハンターJ

 もう殴られてもいいから帰ろ……。


 投げやりな気持ちになったとき、携帯が鳴った。名状しがたい神話の生物さんからだった。


 出ようとしたら、コーギーにスマホを取られた。



「ちょ……!!!」


 コーギーはダッシュで逃げ始めた。


 すぐに後を追いかけるが、足が速い上に買い物客をこっちに突き飛ばしてくる。なんて迷惑なやつだ!


 コーギーはフロアの端にある階段に辿り着き、一段跳びで駆け上がっていった。


 くそどこまでも腹立つ!!


 スマホは変えたばかりでまだロックをかけていなかった。アイツのことだ。何をするかわからない……!!



 だいぶ遅れて、デパートの屋上に着いた。屋上は、人工芝生が敷かれた休憩スペースになっている。


 ベンチに座っているコーギーを見つけた。嗚呼、こんな時、鈍器を持っていれば……。



 コーギーのそばに行くと、コーギーはノールックでこちらにスマホを差し出した。


「スロヲの『サメハンターJ』のアプリゲームを入れてやったぞ」


「ア、アプリゲームになってたの……?」


 スマホを手に取り、画面を見る。


 二頭身にデフォルメされた主人公が、寄ってくる鮫を倒しながら前に進んでいく。鞭を振り回す姿がかわいい。口をぱくぱくさせ、尾をぱたぱたさせている鮫もかわいい。


「これ、誰が作ったんですか?」


「彼のファンらしい」


「へぇ! すごい!」


「それを作るくらいなら、主人公をコーギーにして、逃げ惑うカップルを殺戮するゲームを作ればいいのに」


「……まあ、一定の需要はありそうですけど……」


「あるいは、雨川を主人公にして、女の大群からF70だけを仕留めるスナイパーゲームを作ればいいのに」


「それの需要は厳しいかな」


「アプリのレビューを見てみろ」


 レビュー画面をスクロールしていく。


『村長が不可解』『村長失格』『村長黒幕』


 村長に何が?!

 気になる。うっかりやり込んでしまいそうだ。


 ふと、最新のレビューを見る。


『レベルが上がったら、村の女子の中からお気に入りの子を選んで、子種を分け与えるミニゲームがついたらいいと思います♡さくらこ』


「何書いてくれてんだコラァ!!!」


 スタスタと出口に向かうコーギーを殴れるものがないか、辺りを探した。

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