第8話 檸檬

 コーギーはデパート内の本屋に向かった。


 もうここで帰っても全然いいのだろうが、このままアイツにバカにされっぱなしでは気が済まない。


 アイツに一泡吹かせたい。何かいい方法がないか探るために後をつけた。



 アイツは本屋の入り口に立って、レジにいる若い男女を見つめていた。二人はなぜか同じ本を持っている。


「えー? なんで同じの選んでるの?」


「だって、読みたがってたじゃん。俺も読んでみたかったから」


「ひとつ返す?」


「いいじゃない。せーので感想言い合おうよ」



 コーギーを見た。尋常じゃなく震えている。


 そして、着ぐるみ(おそらくパジャマ)のポケットから何かを取り出した。


 投球フォームをとる。


 何かが放たれ、彼氏の頭を直撃した。


「いたっ!!」


 コーギーは小さくガッツポーズをすると、素早く逃げ出した。


 落ちた何かに目をやると、それは檸檬だった。


 ――それをそのままにしておいてコーギーは、なに喰くわぬ顔をして外へ出ていったのだ――

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