第5話 みんなちがって、みんないい。

 私たちは野菜売り場について、レタスの山を見ていた。コーギーはレタスを一個一個手に取り何回転かさせて何かをチェックしている。一体何を調べているのか。後ろから警備員の視線を感じる。よくこの被り物で入れたと思う。



「全部レタスだ」


「でしょうね。ユーリさんの作品読みましたけど、レタスの訓練はお店に陳列する前の話ですから」


「多様性と言いながら、ここにはキャベ……いや、レタスしかない」


「でしょうね。レタスコーナーですから」


「矛盾している」


「レタスコーナーだから、矛盾してないですよ」


「多様性と言いながら、キャベ……いや、レタスを集めている」


「だから、レタスが欲しい人が間違えないようにしてるんでしょうが」


「時代には多様性を求めるが、自分の生活は変わってほしくない。人間とはそういうものだ」


「深そうな深くないような。いや、深くない。屁理屈もいいところっていうか」


「みんなちがって、みんないい……と思うか?」


「……思いますよ。みんな同じにはなれないんだから」


「じゃあ、お前はこのキャベ……いや、レタスの山を見て、それぞれの違いがわかるのか?」


「……わかんないですよ」


「その程度で、”個性が大事☆”とか言ってんだろ」


「人間はさすがにわかりますよ! レタスはわかんなくていいじゃないですか!」


「差別だ。キャベ……いや、レタスより人間が上位だという驕った精神がみえる」


「お前キャベツとレタスの違いわかってねーだろ!」

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