第21話 次々決まっていく方法

 キリアンと町を歩く中で、彼は難しい顔をしているように見えた。

 あくまで私の所感だけれど……。


「キリアン、先程のご令嬢にやはり見覚えは……?」


「ないですね。ああ、いや……そういえば商団を助けた際、騎士たちに対して商団長が感謝と共に館に招いてくれたことがあり、団長が断ったんですが……その際に家族を紹介するだのなんだの言っていたような気がします」


「まあ……」


 よくわからないわ!

 キリアンも詳しくは知らないようだし、団長様がお断りになったのならそれで終わったことだもの……というか、商団が騎士団に救われたのだとしても、あくまで騎士たちからしてみたらお仕事だものね……。

 逆に毎回お礼をもらっていては国に仕える騎士として風紀が乱れると言われてもおかしくないから、団長様がお断りになるのももっともな話。


(……まあ、もしかしたら商団長は自分の娘を騎士と娶せて縁を繋ぎたかったのかしら。騎士たちは騎士爵を得るに至らなくても、かなりの高給取りだものね……)


 平民が就ける軍の職としては一般兵から始まって騎士へと段階がある。

 騎士になった上で騎士爵を得るに至れば平民であろうと部下を持つこともできる。

 貴族の場合は騎士からスタートなので、平民からして見れば貴族と並び立つくらいの職に就いている人だもの。


 町を歩いているとキリアンの顔を知っているらしい町の人たちが小さな歓声を漏らしているところを見ると、彼らの憧れなのかもしれない。


(そんな人の婚約者だなんて、私は理解していなかった……)


 貴族令嬢たちに人気があることは知っていたけれど。

 ……私ったら本当に上辺だけしか彼のことを見ていなかったのかしら?


 そんなことはないって否定したいのに、自分に自信が持てないわ……。


「キリアン、あの……」


「この店です」


「えっ、あ……そ、そうなの。素敵なお店ね」


「アシュリー嬢が気に入ってくれると嬉しいんですが。騎士団の先輩たちが、細君との記念日などに利用する店だそうです」


「まあ!」


 ということは騎士団の人たちにとってもちょっといいお店っていう位置づけなのでは?

 ならそれなりのお値段がするのでは……!?


(お兄様が贈り物とかでキリアンのお財布事情を心配していたのに、私のためにまさか無理を……!? いやでもここでいきなり別の店にしようとか言ったらさすがに失礼よね)


 今回は甘えさせてもらって、何か別の方法でキリアンに返していけるようにする方法を見つけるのも必要だわ!!


 七つ目。

 キリアンに散財をさせないように、別途案を考える(急務!)。

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