発情期

まえがき


アウトだったら直します。すんません


─────────────────────


「寒いでしょ? 一緒に入りましょう?」



 …………なんて?



 抵抗空しく、聖羅せいらさんに連れられてきたのは風呂場。それも、聖羅せいらさんと美藍みらんが入浴しているところへ、だ。


 睨まれるかと思いきや、恥ずかしさのあまり目を見開き、顔を真っ赤にしたまま硬直する美藍みらん


 流石に美藍みらんが可哀そうだから俺は出ていきたいんだけど……まるで犬を抱きかかえるように、聖羅せいらさんは俺の身体をがっちり抱え込んで離さない。下手に身体を動かせば聖羅せいらさんはさらに力を込めてきて、ムニムニと柔らかい胸が強く押し付けられる。



 一旦抵抗を諦めた俺は固く目を閉じるも、美藍みらんのおっぱ……胸部にある桜色の突起が脳裏に焼き付いてしまっていた。



「ハ、ハルまで連れてくることないじゃない……!」


聖羅せいらさんっ! さすがに混浴は———」


美藍みらんさんも心配してたでしょ? 春空はるく君が寒そうだって……」


「そ、それはそうなんだけど……でも、まだ・・結婚もしてないのにこんなこと……!」


「じゃあ、このまま凍えてる春空はるく君をまた追い出す?」


「俺出ていくから、離して———」


「そっ……そんな風に言ったらかわいそうじゃない……」


「でしょ? それなら一緒に入った方がいいじゃない。それに……」


「いや、だから俺は出ていくって———」


「それに……何よ?」


美藍みらんさん、さっきからずっとチラチラ春空はるく君の下半身を見てる。発情期?」


「っ!?」


「違っ……! 別に見てないから!」


「そう? なら一緒に入っていても大丈夫よね?」


「当たり前じゃない! 聖羅せいらこそハルを意識してるんじゃないかしら!?」


「私? ……私は意識しまくってるけど……?」


「ちょっ……!?」



 聖羅せいらさんの、温かくしなやかな手が俺の腹を撫で、ゆっくりと下へと下がっていく。目を閉じていて見えていない分意識が集中して、ゾクゾクとした感覚に襲われる。


 身を捩って抵抗するも、余計にぎゅっと聖羅せいらさんの腕に力が込められて抜け出せない。こうなったら……!



「ごめん、聖羅せいらさん……!」


「ぁっ、んっ……!」



 俺を抱き締める聖羅せいらさんの白い二の腕へ、躊躇いながらも軽く噛みつく。怪我をしない程度に、それでいて痛みを感じる程度に。


 俺の反撃に驚いたのか、聖羅せいらさんは声を上げながら身体をビクッと震わせ、わずかに拘束が緩む。その隙を突いた俺は、聖羅せいらさんの拘束を抜け出してドアの方へ———



「えっ———」


「きゃっ!」



 グイッと強く引っ張られた俺は、その勢いに負けてバランスを崩し……その先に居た美藍みらんに受け止められ、二人揃ってバスタブへと凭れかかった。



「痛たたた……ちょっと! なんてことするのよ聖羅せいら


「な、何が———っ!」



 ふと意識を向ければ、俺の背中は美藍みらんと密着していて……彼女の小さ———慎ましい胸も、ここまで密着すればその存在ははっきり分かる。


 そして———



「はっ、ぅ……春空はるく君……♡」



 熱に浮かされたような恍惚な笑顔を浮かべ、吐息を漏らす聖羅せいらさんが、ゆらりと揺れて俺ににじり寄る。


 真っすぐに俺を見つめてくる綺麗な瞳にはハートマークが浮かんでいるように幻視でき、ふわりと甘い香りが俺の鼻を擽る。



「せ、聖羅せいらさん……?」


春空はるく君、いきなり噛みついてきたら痛いじゃない……♡」


「ご、ごめ———」


「そのせいで完全にスイッチ・・・・が入っちゃったんだもの……ごめんね、もう抑えられないの……♡」


「えっ、ちょっ……!?」



 まるで愛撫するように俺の肩に手を置いた聖羅せいらさんは、そのまま膝立ちになって俺に跨ってくる。


 全く隠す気もない彼女の胸が目の前で揺れ、俺の腰に滴ってくる液体は、風呂のお湯なのかそれとも———



 春空はるくは知る由もないが、聖羅せいら春空はるくに対し歪んだ性癖を抱えていた。


 それは以前、春空はるくにお腹を噛まれたことで自覚した『被虐性癖』。それも、ユキヒョウである自分が食物連鎖的にもっと下の立場であるはずの春空リスに噛まれるという、本来ありえない状況でしか自覚できなかったものだ。


 つまり、『春空はるくに噛まれる』ことに性的興奮を覚える聖羅せいらが、その通りの状況に陥ってしまったわけで……



 春になり発情期が近かった彼女は、今まさにこの瞬間、完全に発情期へと突入してしまったのだ。



「ぅおっ……!」


「あっ……♡」



 俺の上に腰を下ろした聖羅せいらさんは、グイグイとその部分・・・・を押し付けてくる。その姿があまりにも煽情的で、俺の理性は———



「見ちゃダメ、ハル!」


「っ……!」


「ハル、落ち着いて聞いて? 聖羅せいらちゃんは多分、その……完全に発情しちゃってる……」


「発———えっ!?」



 ふいに後ろから美藍みらんに目を塞がれ、彼女が俺の耳元でそう囁いてくる。……あの、目を塞がれると、余計に感触に意識が……。


 と言うか、美藍みらんも密着度が……!



「えっと……美藍みらん、俺はどうすれば……?」


「獣人の女の子は、こうなったらもうどうしようもないわよ……解消するには子作り・・・するしかないもの」


「子づ———いやいやいやっ!?」


「でもっ! それをあたしが許すわけないじゃない? ハルの初めてを予約してるのはあたしなんだから!」


「っ~~……じゃ、じゃあどうすれば……」



 その時・・・が来たらヤる気満々の美藍みらんは一旦スルーするとして……発情期に突入した聖羅せいらさんに押し倒されているこの状況、間違いなく俺の貞操の危機だ。



「とにかく、聖羅せいらちゃんを少しでも満足させないとこの場所から出ることもできないわ。……ってことでハル、ハルはしばらく見ちゃダメ。聞いちゃダメ。手だけ貸してくれる……?」


「えっ?」



 耳元でそう伝えてきた美藍みらんは、俺の目を塞いでいた手を離すと、代わりにタオルで目と耳を塞いでくる。彼女が使っていたタオルなのか、なんだかやけにいい匂いがする気が……。


 そんな彼女は俺の手を取ると、そのまま———



「んんっ!♡」



 美藍みらんに導かれるままに俺の手が暖かい何かに触れると同時、浴室に聖羅せいらさんの嬌声が響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る