ハダカの付き合いで仲が深まる……らしい

 雨に濡れた服は、容赦なく人の体温を奪う。春空はるく聖羅せいらのような恒温動物ならともかく、変温動物である美藍みらんはその影響を直接受けるのだ。


 体温が下がってきた美藍みらんを温めるべく、聖羅せいら美藍みらんを連れてお風呂に入ることにしたのだった。



「ふぅ……温まるわね……」



 湯船に浸かった美藍みらんは、バスタブに顎を乗せながら、シャワーの前で身体を洗う聖羅せいらを眺める。


 よくもまぁプルンプルン揺れる胸だこと……ブラ外してもそんなに垂れないし、メートルあるかも……?


 そのくせ腰は細いし……その細さでなんでその胸を支えられるのかしら。



 私はあんまり成長しないのに……。



「……何、私の身体をじっと見て」


「別に、あんたも優しいところがあるなと思っただけよ……」



 聖羅せいらに指摘され、少し頬を染めながら目を逸らす美藍みらん。女性の身体に見惚れていたのも、その相手がクラスメイトなのも、それを本人に指定されるのも、美藍みらんにとっては恥ずかしかった。



「あなたは春空はるく君を取り合うライバルだけど、別に嫌ってるわけじゃないもの。友達じゃない」


「……ありがと、助かったわ」


「えぇ……ところで、なんで私の身体を眺めていたの?」


「蒸し返さないでよバカッ!」


「だって気になるじゃない……あれだけじっと見られたら」


「うっ……全部気づかれてたなんて…………そ、そうよ! あんたのスタイルに見惚れてたのよ!」


「ふふ、可愛い……」


「大体、あんたのスタイルが良すぎるのよ。今どきの雑誌の表紙でもそんなの見ないわよ?」


美藍みらんさんだって、ボディラインは私から見ても綺麗だと思うわよ?」


「色々小さいから、せめて良く見えるように気を付けてはいるけど……」


「結局それが男子に人気の理由なのよね」


「ロリコンばっかりなのかしら。私はハルだけが良いのに……って、ハルはどうしてるの?」


春空はるく君? ……そうね、気を使って私達に先にお風呂譲ってくれたから、まだ濡れたままかも……」


「っ! それはまずいじゃない、私達のせいで風邪ひいちゃったら……」



 そこまで言いかけた美藍みらんは、ふと言葉を止め、虚空を見つめる。かと思えば、少し困ったような表情で頬を赤く染めた。



「……風邪を引いた春空はるく君相手に、何を想像したのかしら?」


「何でもないわよ! ……私のせいでハルが風邪を引くなんて嫌だし、それでハルが休むなんて、学校がつまらないじゃない……」


春空はるく君がよっぽど心配なのね」


「当たり前じゃない」


「……遠慮してたけど、あなたそう思うのなら構わないわね?」


「えっ……?」



 身体の泡を洗い流し、おもむろに立ち上がった聖羅せいらは、キョトンとした様子の美藍みらんを置いて浴室を出て行ってしまったのだ。


 一人残された美藍みらんは呆然としつつ、仕方がないから自分も出ようと立ち上がり———



聖羅せいらさ……ちょっ、なんで服着てな———!」


「……?」



 聞こえてきた声に、頭の上にはてなマークが浮かぶ。

 そして、ドタドタと足音が風呂場へと近づいてきて……



「いやっ、俺はいいからっ! 離して———」


「ま、まさか……」


「大丈夫、美藍みらんさんも春空はるく君のことを心配していたから」


「そういう問題じゃ……!」



 美藍みらんの予想は的中していた。

 バンッ! と勢いよく開けられたドアから現れたのは、聖羅せいらに抱えられて連れてこられた春空はるくだった。



        ♢♢♢♢



 服を乾かしたいところだったけど、聖羅せいらさんと美藍みらんがお風呂に入っている間は脱衣場にも入るわけにはいかない。


 上着やズボンをハンガーにかけた俺は、ひとまず暖房に当たって暖を取っていたのだが……



 突然、バスタオル一枚姿の聖羅せいらさんが現れて捕獲されたのだ!


 何を言ってるのか分からねぇと思うが、俺も何をされたのか分からねぇ……ただ抵抗もむなしく……というか、単純にフィジカルで勝てなかったよ……。


 ジタバタしても聖羅せいらさんの拘束は解けることは無く、抱っこで抱えられ風呂場まで連れてこられてしまったのだ。



 せ、背中にタオル一枚隔てた聖羅せいらさんの胸が……! ほぼゼロ距離の密着……と言うか胸に沈んでマイナスじゃないかこれ?


 いや、そんなこと考えてる場合じゃない!



 聖羅せいらさんは容赦なくドアを開け、俺を中にまで連れ込む。そこには当然美藍みらんも居るわけで……



「あっ、うっ……」


「み、美藍みらん! ごめっ、見てないからっ……!」



 俺を前に真っ赤になって美藍みらんは、胸と股間を隠して硬直してしまう。その直前、チラッと見えた桜色の突起は……とりあえず見なかったことにして。


 目を固く閉じた俺は、ひとまず冷静に聖羅せいらさんへと語りかける。



「あの、聖羅せいらさん……? どうしてこんなこと———」


「私も春空はるく君が心配で、美藍みらんさんもそう思ってる。だから、春空はるく君を連れてきたのよ」


「えっと……?」


「寒いでしょ? 一緒に入りましょう?」



 …………なんて?

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