自撮りタイム(千夏・杏樹)

「確かこの辺に……あった♪」



 その日の夜、帰宅した千夏ちなつは、自身の押し入れの中を漁り、奥深くにしまってあったチアガール衣装を引っ張り出した。


 これは、以前千夏ちなつが使っていたものだった。

 中学二年生に上がった頃に辞めてしまったから、もう二年ほど経つ。



「お兄がこれ好きなら、今も続けていれば良かったかなぁ」



 オオカミ故、小さいころから凄まじい身体能力を発揮していた千夏ちなつは、バレーやバスケをはじめ、様々なスポーツをやって来た。


 その中の一つにチアリーディングもあったのだ。



 見た目も飛びぬけていた千夏ちなつのチアリーディングは、それはそれは人気があった。それだけならよかったのだが、周囲の男子……教員も含めた男性たちの目が自分の胸や脚に注がれているのに気づき、辞めてしまったのだ。


 今でこそ『お兄ちゃんが巨乳好き』と知って吹っ切れているから良いものの、当時は周囲よりも成熟した自分の身体を気にしていたから……。



「……二年前だし、着れるはず———」



 服を脱ぎ、衣装に腕を通すも…………衣装がつっかえたことに、サァッと血の気が引く千夏ちなつ




「うそっ、キツい……?」



 そんなはずは……確かに体重はちょっと増えてるけど、気にするほどでもないし……いやでも、お兄にはああ・・言われたし……。



「いや、絶対太ってないから! まだまだ細いところを見せつけてやるんだから!」



 千夏ちなつは失礼なことを口走った兄を見返すべく、裾でつっかえたを衣装の中に押し込んだ。







 しっかりと衣装を着こんだ千夏は、渾身の笑顔とピースでまずは一枚撮影する。



「まぁこの衣装ならこんな感じだけど……うーん、可愛いけどありきたりかなぁ……」



 細いのを見せるのなら、もっとこんな感じに……。

 ベッドに凭れるように座り、お腹を捲り上げてもう一枚。


 うん、どう見ても完璧なくびれ……な気がする。


 次は四つん這いで、前のめりに胸元を強調して一枚……む、胸は雪谷ゆきやさんに負けるかも……。


 ならこうだ!


 胸元にカメラを近づけると、谷間の向こうにお腹が見える構図に。

 顔は映ってないけど、なんかすごくエッチな感じがしない?


 他にも四つん這いのお尻側に鏡を置き、振り向くような構図で撮影してみる。衣装が小さいからか、かなりギリギリなところまで見えてるけど……。



 撮影することしばらく。

 納得のいく写真が何枚も撮れ、かなり満足だ。



「ここまですれば、お兄も嫌でも意識するでしょ♡」



 『いつでも使えるようにちゃんと保存しといてね!』というメッセージと共に、お兄に写真を送っていく。



「ふふ、私に手を出してくるのも時間の問題かなぁ……♡」



        ♢♢♢♢



春空はるくさんが望むなら私は……♡」



 帰宅した杏樹あんじゅは、今日の春空はるくの様子を思い浮かべつつ、すぐにクローゼットの中からチアガール衣装を取り出した。


 なぜそんなものがあるのかは……まぁ、趣味である。



 春空はるくが喜んでくれるのなら、躊躇う必要はない。杏樹あんじゅはすぐに服を脱ぎ捨て、衣装に腕を通していく。


 春空はるくさんの周りにいた先輩たちと比べると、自分の身体は少しだらしないかもしれない。


 でも、それならそれで……



「うぅ……やっぱり恥ずかしいかも……」



 あまり着ていなかった間に小さくなっていた衣装は、胸が苦しくて谷間がしっかりと見えてしまっている。


 カメラを自分に向けたものの、恥ずかしくなり片手で隠しながら撮影する。



春空はるくさん、どう思うかな……でも、見てくれるのは、見てほしいのは春空はるくさんしか……」



 メッセージを打ち込み、そのまま送って良いのかと悩むことしばらく。


 うんうん唸りながらたっぷり10分ほど悩んだ杏樹あんじゅは、意を決して春空はるくに写真を送った。



「ぁうっ……送っちゃった……」



 見てくれるのだろうか。

 春空はるくさんは迷惑じゃないだろうか。


 気持ち悪いとか思われたら……



「っ~~!」



 嫌な方向へと思考が行ってしまう杏樹あんじゅは、ごろんとベッドに横になる。


 もし春空はるくさんに嫌われたら、立ち直る自信がない。


 それは怖いけど、どうしても春空はるくさんからの返信が気になってしまい、横になりながらもスマホからは目が離せないでいた。



「っ! 返信来た……!」



 彼からの返信を待つこと数十分。

 じっと眺めていたスマホに届いた通知にいち早く反応した杏樹あんじゅは、すぐにメッセージを確認する。


 そこには、『似合っていて可愛いね』と……



「ふふふ……あぁ、よかったぁ……♡」



 春空はるくさんが自分の写真を見て、『可愛い』と言ってくれた。そんな簡単な言葉でも、杏樹あんじゅにとっては甘美な響きだった。


 春空はるくさんに自分の身体を見られている……ものすごく恥ずかしいが、その一方で杏樹あんじゅは心の底から喜びを感じていた。



 もっと春空はるくさんに見てほしい。

 もっと自分を身近に感じてほしい。

 もっと自分の身体を……。



「あっ……こんな写真送ったら私……全部見られ……♡」



 他の人が知らないトコロまで全部春空はるくさんに見られてると思うと、身体の奥が熱を発しているように熱くなってきてしまう。


 杏樹あんじゅはどうしても我慢できず、今晩も———



─────────────────────

あとがき


 かなりアレな書き方してますけど、杏樹ちゃんはR18に引っ掛かるような写真は撮ってないですからね! せいぜい下着がちょっと見えちゃったぐらいですからね!

 ……まぁ一人遊び・・・・は間違いなく……


変な想像した人はアウトですよ


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