ウサギにすら狙われるリス
まえがき
我ながらやべぇヒロインを生み出してしまったのかもしれない……
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オオカミとウサギと言えど、そこはさすが女子同士と言うべきか。最近のファッションがどうだとか、担任の先生が、クラスの男子が……話題には事欠かない。
……のだが。
「まだ初日だってのに今日いきなり告白されてさ……」
「
「正直、全然知らない人にいきなり告られてもどうしようもないって……ぱっと見で判断して告白とか、軽すぎない?」
「まぁ、そうですよね……」
「あいつ、多分
「私にも……? そんなことは……」
「
……
確かに
しかし、彼女に声をかけた男子達は、漏れなくこんな風に思われているなんて……俺もクラスの女子にそんな風に思われていないか心配になってくる。
「……
「へっ……?」
「だって、前髪に隠れてるけど目だって大きいし顔立ちも整ってるし……猫背で目立たないけど、スタイルだって抜群じゃん? 男子が放っておかないと思うんだけど……」
「その……あんまり良い思い出がなくて……」
少し俯いた
地雷を踏んでいくのは兄妹似てるな、本当……。
「その、ごめんね? 変なこと思い出させて……」
「いいんです……その、私は周りよりも成長が早くて、小学校の時から体型でからかわれることが度々あって……。猫背なのは、その時からの癖です……」
「…………」
「あまり目立たないようにしようって過ごしてきて、だから友達もいなくて……ぁっ、ごめんなさい、こんな話……!」
「ううん、私の方こそごめんなさい。無理矢理連れてくるようなことしちゃって……」
「違います……!
「
「えっ……?」
俺の口から出たその言葉に、
「少なくとも、
「それはもちろんです……!」
「
「ちょっとお兄?」
「だから友達を家に連れてくるなんてことなくて、
「そ、そうなんですか……意外です」
「だから、
「い、いえ……私なんてそんな大したことは……」
「
「ぇ……」
「変わろうって思っても、人ってすぐに変われるわけでもないしさ。
「先輩……!」
うっ……こうして見ると、確かに可愛い……。
意気地無しの俺には眩しすぎるけど、目を逸らしたりしたら口先だけだと思われるかも。
できる限りの笑顔で返しておく。
「お兄、
「えっ……? いやっ、そういうつもりじゃなくて───」
「少なくとも
「わ、私が……!? そんな、滅相もない……!」
「じゃあ、
「どうって……優しくて頼りになりますし、猛獣の方達を手懐けていて尊敬しますし、側にいると安心するというか……」
「「えっ……?」」
「えっ……あの、私、変なこと言いました……?」
「いや、だって今の言い方……なんかお兄が好きみたいな……」
「えっ……ぁっ、っ~~!」
カァァァッと
「いやっ、そのっ、そんなつもりはっ……!」
「ってことは、本心じゃない……?」
「いえっ、本心ですけどっ! でも違くてっ、そのっ、っ~~!」
「わっ!?」
居ても立ってもいられなくなった様子の
ウサギ故の特性である脚ダン……『スタンピング』だ。ウサギが感情を訴える目的で行う習性だけど、
って考えてる場合じゃないな。
冷めてはいるものの紅茶は残っていたようで、
「あちゃー……早く洗わないと染みになっちゃう……」
「あっ、そのっ、ごめんなさい!」
「獣人の性質だからしかたないよ、
「そうするっ! お兄、ちょっと掃除と
タオルをスカートに当てながら、
そんな後ろ姿を見つつ、俺は布巾で机や椅子を拭く。
「わ、私が掃除しますから……!」
「大丈夫だよ、別に火傷とかもないし、服も洗濯すれば問題ないからね」
「ごめんなさい……。あぅぅ……またやってしまいました……」
心底落ち込んだ様子の
まだ自己嫌悪に陥りそうで、俺は思わず慰めるように彼女の背中を擦る。
「んっ……先輩っ……!」
「わざとじゃないんだし、
「ぅっ……くっ……」
身体を小さく震わせ、泣いてるような声が聞こえてくる。
女の子の慰め方なんて俺には分からないけど、
この時、俺は知らなかったのだ。
『背中を撫でる』という行為が、イヌとウサギでは訳が違うということを。
♢♢♢♢
その後、着替えて戻ってきた
「うぅ……また明日謝っておかないと……」
制服をハンガーに掛け、洗濯物を纏めながら、
迷惑をかけたのに笑顔で送ってくれた
「
イヌやネコが飼い主に背中を撫でられるのは、あくまでも親愛の証。『自分は仲間だ』と伝えたいだけだ。
しかしウサギは……年中発情期のメスのウサギの背中や腰を撫でるというのは、それは性交に匹敵する行為に他ならない。
それこそ、偽妊娠を誘発するほどの───
「ぁっ、はっ……♡」
部屋に籠った
思い浮かぶのは、猛獣から守ってくれて……優しくて頼りになる、友達の兄の姿。
一度火が着いた獣の本能は、留まることを知らないのだ。
「先輩っ、
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