新しい春の始まり
「待ちに待ったこの日が、ようやく来ましたね!」
「ついに来ちゃったわね……」
「毎日のように『楽しみだ』って言ってたもんなぁ」
「でも、
朝からハイテンションで声を上げる
昨日入学式を終え、今日は始業式を行う。そして今日が在校生と新入生が顔を合わせる、最初の日となるのだ。つまりそれは、俺と
毎日
「とにかく入学おめでとう、
「えぇ、本当におめでとう」
「ありがとうございます! 今日からは私も一緒に登校しますからね、お兄の独り占めはさせませんから!」
「騒がしい毎日になりそうね……」
少し呆れたようにそう呟きながらも、嬉しそうに口角が上がるのを隠せていない
「そろそろ行こうか? 初日から遅刻なんてしたくないし」
「行こっか、お兄!」
支度を終えて家を出ると、サッと俺の右手を握る
出遅れた
「……仕方ないわね、今日の主役は
「ここは私の専用席です!」
「
「……手を握ってないと迷子になるから?」
「ちょっと、私を小学生か何かだと思ってるのかしら!?」
「誰が見ても小学生だと思うけど……?」
「このっ……あんたみたいな恵体と比べないでくれるかしらっ! あたしが小さいんじゃなくてあんたがでかいのよ!」
「んやっ……! 待っ、ぁんっ……!」
声を荒げた
制服の上からでも圧倒されるほどに大きい
正直、
「あんな二人は放っておいて早く行こ?」
「っ……! そ、そうだな……!」
俺が
その後、追いついた
……美少女に囲まれるのはいいけど、これ傍から見るとどんなふうに映ってるんだろう……。
謎の緊張感に苛まれながらも、学校へと向かって歩くこと数分……交差点に差し掛かった時の事だった。
「ぁうっ……!」
「きゃっ!」
突然、左側から走ってきた人と
そこは獣人ゆえの反応速度で……と言いたいところだけど、背も小さくて力も強くない俺には、
咄嗟に2人を身体で受け止めたはいいものの、勢いに負けて俺の身体は後ろへと倒れかけ———
「んっ……!」
「あっぶな……!」
同じく超反応を見せた
うーん、エアバックっぱい……じゃなくてっ!
後頭部と肩に感じる、
ぶつかってきたその人物は、俺よりも少し背が低いぐらいの、眼鏡をかけた少女だった。黒髪を三つ編みにして、少し猫背になっている様子を見ると……悪い言い方をするなら、典型的な陰キャって感じだ。
いや、ごめん。俺も人のことを言えない程度には陰キャって感じの見た目だけどね。
「あっ、あのっ、ごめんなさい……!」
「いきなり飛び出してくるなんて危ないじゃない!」
「とりあえず? 二人ともケガはない?」
「私は大丈夫だけど……ありがとう、ハル」
「は、はいっ! あの、受け止めてくださったおかげで私もケガはないです!」
「それは良かった……けど、交差点で跳び出したら危ないでしょ?」
「そうよ。私達だったからまだいいけど、車だったら無事じゃすまないわよ?」
「ひっ、あのっ、そのっ———」
「ご、ごめんなさいっ!」
「「「っ!?」」」
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