イヌを躾けるのは飼い主の責任だよね……?♡
「……て……い——」
遠くで声が聞こえてきて、俺の意識はゆっくりと浮上していく。
あれ……俺は何をしていたんだっけ……
なんだか夢のような時間を過ごしていたような気がするけど……
「……兄……きて——」
「お兄、起きてっ!」
「っ……!」
慌てて身体を起こすと、呆れた表情の
「やっと起きたのね……
「あっ! ご、ごめん、すっかり寝てた……今何時?」
「もう8時過ぎよ、まったく……」
『遊びに来たけど、
「声をかけても揺すっても、待ってみても起きないし……結局暗くなっちゃったし、
「そ、そっか、悪いことしたな……」
「ま、別に
「うっ……」
なにか埋め合わせしないとなぁ。
「……で、
「……」
意識を失う前の光景を思い出し、俺は口を噤む。
……肌色の景色しか記憶にないんだよなぁ……。他に思い出せるのは、いい匂いと暖かさと、
「な、何もしてないよ……」
「本当に? 怪しいけど……何かいやらしいことしてたんじゃないの?」
「いやっ、してないけどっ……!?」
「そんな風に強く否定されると余計に怪しいんだけど」
まぁでも、確かにお兄の
「っ……」
発情したときの
お兄に付いた残り香だけで、ゾクッと身体が震えてしまうぐらいなのだ。当の本人が、そんな状態でお兄と二人きりになって、我慢できるとは思えない。
人間としての
「……お兄、また噛んでいい?」
「えっ!? なんだよ急に!?」
「なんかこう……むしゃくしゃして」
「八つ当たりにもほどがないか!?」
八つ当たり……確かにそうだ。
お兄の身体から、ユキヒョウの匂いがするのが嫌だ。
せっかく付けた私の匂いが消えてしまっているのが嫌だ。
お兄が他の女の子とイチャイチャしているのが嫌だ。
お兄が誰と仲良くしていようが、彼女を作ろうが、それはお兄の勝手だから私には関係ないはずなのに。
お兄にこっちを向いてほしくて、お兄に嫌がらせをしてしまう。
(私って、こんなに嫉妬深かったんだ……)
「女の子を放っておいて寝落ちしちゃうお兄にはオシオキが必要だもんね♡」
「ほとんど
なんだかんだ言って拒絶しようとするお兄ににじり寄る。赤くなっちゃって……結構好きなくせに……♡
ベッドの上で後ずさるお兄に、私は四つん這いで迫る。その背中に手を回し、首筋に向けて———
「おすわりっ!」
「っ!?」
「俺だってな、やられてばかりじゃないぞ!」
「んぅっ!」
俺の首筋に噛みつこうとしたその瞬間、とっさに出た『おすわり』という指示に、
その隙に
「ふふふ……噛み癖がついた犬を矯正するならこうだよなぁ」
ビックリして動けないでいる
「自由に動けないだろ? 犬の躾け方も調べておいたんだよ。これからは
———躾けてやる。
そう言いかけて、俺は
「フーッ、フーッ……♡」
頬を赤く染め、息を荒くし、目に涙を浮かべてこちらを見つめてくる
思わず見惚れていた俺は、
「ご、ごめん、ちょっとふざけすぎた……」
「んぁっ……♡」
「
「だ、大丈夫……と、とりあえず夕飯出来てるから、早めに食べてね……?」
それだけ言い残し、
なんだか気まずくなっちゃったな、後で謝っておくか……。でもこれで
「はぁぁぁ……♡」
自身の部屋に戻った
兄に命令され、猿轡をはめられ、首輪で行動を制限される……それが、こんなに気持ち良いだなんて———
それとも、元々そうやって
……分からない。
ただ一つ言えるのは、もう一度お兄に首輪を着けてほしいと心の底で感じている、ということだ。
「私がいけないことをしたら、お兄はまた私に首輪を着けてくれる……? リードを握っていてくれる……? もしかしたら、そのまま飼い犬みたいにお散歩に……っ~~♡」
あらぬ想像をした
「ごめんね、お兄……私、悪い子になるかも……。その時は、容赦なく私をお兄のイヌにして……♡」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます