勉強の成果

「ただいまー」


「お邪魔します」


「あれ? まだ千夏ちなつは帰ってないのか」



 俺と聖羅せいらさんが家に到着すると、どうやら誰もいなかったようで、家の中はシンと静まり返っていた。



「ふふ……それなら、私と春空はるく君の二人っきりね……♪」


「そ、そうだね……」



 冷静になってみたら、色々・・されるのが分かってて聖羅せいらさんを家に連れてくるなんて、なかなかヤバいんじゃない?



「ふふ、ちょうどいいじゃない? これなら周りを気にせず楽しめるから……」



 ここまで連れて来て、『やっぱり無しで』なんてことはできない。聖羅せいらさんはなぜかやる気満々だし、せめて負けないようにしなければ……!



        ♢♢♢♢



「じゃあ早速……♡」


「っ……!?」



 俺の部屋に入るや否や、俺はベッドに押し倒される。


 笑みを浮かべ、小さく舌舐めずりしながら近づいてくる聖羅せいらさんの眼は、明らかに捕食者のそれだ。


 ネクタイを外し、胸元のボタンを開けたことで、苦しそうに押し込まれていた聖羅せいらさんの胸が少しだけ解放され、プルンッと揺れながら谷間が露になる。



「えっ───あの、聖羅せいらさん……、その、下着は……?」


「……邪魔になるから外したけど……?」



 一番上のボタンを外されてもなお窮屈そうな聖羅せいらさんの胸は、明らかに下着に包まれていない。


 白いシャツに透けた淡い色の肌が、呆然とする俺にゆっくりと近づいていくる。



 あ、まずい───


 そのまま覆い被さってきたことにより胸が目の前に来て、甘い香りと息遣いを間近に感じ、理性が揺らぐ。


 聖羅せいらさんはそのまま身を預けるように力を抜き───



「んっ……?」



 小さく声をあげたのは、聖羅せいらさんだった。俺は聖羅せいらさんに抱き締められて身動きが取れなくなる前に彼女の喉へと手を伸ばし、擽るように撫で始めたのだ。


 最初はキョトンとしていた聖羅せいらさんも、すぐに気持ち良さそうに目を細め、次第にゴロゴロと喉を鳴らし始める。



「ふぅ……誘惑に負けるところだった……」


「ん~~……」


「……気持ち良さそうだね?」


「うん……結構なお手前で……。春空はるく君に撫でられるの、好き……♡」



 まるで弱点をさらけ出すように顔を上げ、自ら喉を撫でて貰うようにして、『好き』だなんて口にする聖羅せいらさんに、思わずドキッと心臓が跳ねる。



「そ、それなら練習した甲斐があったね」



 少し目を逸らし、そう適当に返答するので精一杯だった。



「練習……?」


「えっ……?」



 それまで気持ち良さそうに細められていた聖羅せいらさんの目が少し開き、鋭い視線が注がれる。



「練習って、何処で? どうやって?」


「えっ、いや……ネコカフェに行ったって言ったじゃん……? そこで店員さんに色々教えて貰って……」


「あぁ、練習ってそういう。私てっきり……」


「てっきり……?」


「何でもない。……で、そこのネコを撫でまわして来たんだ?」


「ま、まぁ……そうだけど」


「ふぅん……」



 あっ、なんか不機嫌そうにベッドを叩く尻尾が幻視できるような……。聖羅せいらさん、嫉妬してる……?



「私にはしてないのに他の子にはするんだ……」


「あの、聖羅せいらさん……?」


「他にはどんなことをしたの……?」


「他に……? えっと……仰向けにしてお腹を撫でたり……?」


「私にもして?」


「えっ……っ!?」



 俺が何か言うよりも早く、なんと聖羅せいらさんは俺の膝の上に仰向けに寝転ぶと、制服のシャツをたくし上げて腹部を露出したのだ。


 シミ一つ無い白い肌も、芸術的なクビレも、可愛らしいヘソも、隠すことなく丸見えである。



 あまりにエッ───扇情的な光景に、俺は咄嗟に目を逸らしていた。これを撫でるって、ハードル高すぎないか……?



「いや、撫でろって言われても……!」


「いいから、ほら……んっ」


「ふぉぉぉぉっ……!?」



 おもむろに俺の手を掴んだ彼女は、そのまま自身の腹部に俺の手を当てる。


 しっとりとして吸い付くようなきめ細かい肌の感触、そして少し高めの体温が直接伝わってきて、手で触れているだけなのに理性が揺さぶられるのが分かる。


 というか、こんな美少女が自らお腹を差し出して『撫でてくれ』だなんて、なんかもうエロすぎて──



「んゃっ……ぁっ」



 無意識に手を滑らせると、聖羅せいらさんの口から艶かしい声が漏れる。ただでさえ理性がヤバいのに、そんな声出さないでくれマジで……!


 いや、俺が手を動かしたせいか。

 なら離さなきゃ…………あれ? 手が離せない……ダメだって分かってるのに、もっと撫でたくて仕方がない───



「んくっ、ぁっ……んっ♡ 気持ちいい……♡」


「──っ」



 俺の手が聖羅せいらさんのお腹を撫で、その度に彼女は声を漏らす。


 体温は先程までより熱くなり、それを示すかのように頬も、そして肌も、ほんのりとピンクがかっているようだ。


 聖羅せいらさんは『男に腹部を撫でられている』という状況の恥ずかしさより、そこから感じられる気持ち良さに夢中なようであった。



 かく言う俺も……文字通り俺の手のひらで、俺より遥かに強い猛獣を手懐けている。そんな、ある意味非現実的な状況に、俺は今まで感じたことの無い優越感に浸っていた。



「んっ……!? ぁっ、春空はるく君……!」


「っ……~~」


「ふぁっ……待って、んぁっ……! 春空はるく君っ……!」


「ハッ……!」



 何度か名前を呼ばれ、俺はハッと我に帰る。いつの間にか俺の手は、彼女のヘソよりも下───下腹部に触れ、指先が下着の中にまで入っているところだった。



「ご、ごめん……!」


「んっ……大丈夫……」



 そう言いつつも、肌を紅潮させ息を荒くする聖羅せいらさんの姿は、あまりにも効きすぎる・・・・・


 俺は心の奥にひっそりと芽生え始めた感情を抑えるのに精一杯だ。



「んっ、ふぅっ……次はどんなことをしたの……?」


「えっ……まだ続けるの……?」


「もちろん……だって春空はるく君は、私の知らないところで楽しんでたんでしょう?」


「俺が変なことしてたみたいに言わないでくれ……!」


「じゃあ何をしてたのよ」


「そ、それは……」



 記憶を遡り、思い付いたのは……あれ・・だ。いや、普通のネコ相手にやるのはともかく、聖羅せいらさんにやるのはちょっと……



「ほら、やっぱり言えないことしてたんじゃない?」


「いや、そうじゃなくて───」


「じゃあ何……?」


「っ……す、吸いましたぁ……」


「吸った……って、あの……?」


「その『吸い』です……」



 いわゆる、『ネコ吸い』というやつだ。ネコの背中やお腹……とにかくもふもふに顔を埋めて、息を吸うあれである。


 頬を染めて少し俯き、悩んだ様子の聖羅せいらさんは、意を決したように制服のスカートを脱ぎ捨てた。



「ちょっ……!?」



 俺の困惑の声も意に介さず、聖羅せいらさんはシャツのボタンを下から開けていき……聖羅せいらさんが今着ているのは、シャツと下着、そしてソックスだけである。


 しかも、そのシャツすらたった2つのボタンしか留まっていない。


 突然の行動にフリーズする俺の目の前で、シャツの裾を両手で広げ色々とさらけ出した聖羅せいらさんは、耳を撫でるような蠱惑的な声で囁く。



「どうぞ、春空はるく君……いっぱい吸って・・・いいよ……♡」

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