肉食獣系少女達は全部お見通し

 その後はとにかく大変だった。

 理性を何とか保ち、迫りくる猛獣達の猛攻をかいくぐり、宥めること小一時間。……落ち着くまでは結構時間がかかった。


 結構夜も遅くなり、夕飯だからと2人を帰すのも忍びなかったため、聖羅せいら美藍みらんも一緒に食べることに。



 当然、夕飯の席では母親に冷やかされた。『あんた、美藍みらんちゃんだけで飽き足らず、こんな可愛い子まで!? 我が息子ながら隅に置けないわね!』みたいな、厚かましいおばさんな絡みが延々と続いたのだ。


 すっかり暗くなった後、2人を家まで送って帰ってきた俺は、色々と限界で……臨戦態勢のエクスカリバーをなんとか納め、眠りについたのだった(意味深)



        ♢♢♢♢



「お兄♡」

「ハル♡」

春空はるく君♡」


「っ!? み、皆何してっ……!?」



 気づくと、俺はベッドの上で3人に囲まれていた。3人とも一糸纏わぬ姿で目にハートマークを浮かべ、前のめりににじり寄ってくる。



「あたし、ハルとずっとこうしたかったの♡」


「私がヒョウであなたがリスだからとか関係ないわ……一人の男の子として、春空はるく君が欲しいの♡」


「兄妹同士でいけないこととは分かってるけど、この気持ちはどうしようもないの♡」


「落ち着け皆……っ!? か、身体が動かな———」


「大丈夫、絶対気持ちよくしてあげるから♡」


春空はるく君は何もしなくていいから、私達に任せて♡」


「ごめんねお兄、いただきます♡」


「ちょっ、やめっ———」



 聖羅せいらに伸し掛かられ、胸に顔が埋まって身動きが取れなくなる。彼女はそのままゆっくりと腰を降ろし———



………………………………


……………………


…………




「———はっ!?」



 ゆ、夢か……とんでもなかったな……。

 間違いなく昨日の続き……それも、俺の望む展開を見せられたかのような———



「っ!?」



 身体に電流が走る。

 原因は下半身……主に股間の違和感から。下着の中がぬるっとするその感覚は———



「あっ」(察し)



 全てを察した俺は、とりあえず着替えを持ってトイレに駆け込んだ。



        ♢♢♢♢



「あれ? お兄、今日は早いね?」


「あ、あぁ……ちょっと目が覚めちゃって……」



 処理・・が終わったところで、起きてきた千夏ちなつとばったり会った。千夏ちなつはいつもと変わらない様子だけど、俺はつい昨日の光景を思い出してしまう。



「ふーん、まぁなんでもいいけど……お兄、一人でする・・・・・のはいいけど、ほどほどにね?」


「えっ、あぁ……えっ!? 違っ———」


「オオカミだから僅かな匂いでも分かるんだって。私が今までそれ・・で何回……何でもない。可愛い妹も、エッチな幼馴染も、すっごいスタイルのクラスメイトもいるんだからさ、使いなよ?」


「いやマジで、違うんだって! 聞いてくれぇ!」











「ハル、おはよっ。今日はちゃんと起きられたようね。……けどなんか疲れてる……?」


「あぁ、おはよう美藍みらん。ちょっとね……」



 家を出て少し歩いたところで、美藍みらんと合流する。朝から千夏ちなつの誤解を解くために四苦八苦し、ちょっと疲れたんだよね……。


 心配そうな表情で覗き込むように見上げてくる美藍みらんに、俺は思わずドキッとしてしまう。


 美藍みらんが超絶美少女だということもあるけど、そんな彼女に昨日攻められまくったことや今朝の夢を思い出し、意識してしまうのは仕方がないだろう。



「…………」



 俺が変な風に意識してドキドキしていると、美藍みらんは俺の顔から目を離し、視線を落として固まっている様子。


 どうしたというのだろうか?



美藍みらん……?」


「……ハル、あたしに出会っただけでこんな……溜まってる・・・・・の……?」


「えっ———いやっ、えっ!?」


「だって、そこ・・に熱が集まってるし……」


「ぇあ゛っ」



 頬を赤らめてそう呟く美藍みらんの視線は、俺の下腹部へと注がれ———美藍みらんの熱感知能力は、俺の血が集まる部分・・・・・・・もお見通しのようだ。












 ぎこちない雰囲気で登校すること十数分。

 いつもと違って話が弾まないからか、この登校時間でさえ長く感じた。


 ひとまず美藍みらんと別れ自身のクラスに入った俺は、チラッと窓際へと視線を向ける。すでに聖羅せいらさんは来ていたようで、目が合うと小さく微笑み返してくる。


 俺はまた昨日の出来事と夢を(ry



「おはよう、春空はるく君」


「あぁ、お、おはよう聖羅せいらさん」



雪谷ゆきやさんが自ら挨拶を!?」

「リスちゃんが雪谷ゆきやさんを名前呼びしただと!?」

「くそっ、なんであいつばっか……!」



 自分の席に座る俺と向かい合うように机の前に座った聖羅せいらさんは、机に身を乗り出して俺と目を合わせてくる。


 机に乗った彼女の胸に目を奪われ、ハッと気づいて慌てて視線を逸らす。明らかに不審な動きだったけど、聖羅せいらさんは気にしていない様子だった。



「昨日はごめんなさい……時々、ああして制御ができない時があって……」


「だ、大丈夫だよ……」



 役得だし……とは言えないけど。



「お詫びはまた———んっ……?」


「……聖羅せいらさん? どうし———」



 ピクンッと何かに反応した聖羅せいらさんは、何を思ったのだろうか。


 なんと机の下に潜り込んで椅子に座る俺の脚の間から顔を出し、そのまま下腹部に顔を近づけて匂いを嗅ぎ始めたではないか!


 聖羅せいらさんのまさかの行動に、クラス内が一瞬静寂に包まれ、次第にざわめきが広がっていく。



「せ、聖羅せいらさん!? 何をして———」


「ん~……春空はるく君、今日はなんだか……オスっぽい・・・・・?」


「ん゛ぇっ」



「何その問題発言!?」

有栖川ありすがわ、お前朝からナニしてんの!?」

「つーか雪谷ゆきやさんに何とんでもないことさせてんだよ!」



 あぁぁぁぁぁぁっ!

 千夏ちなつといい美藍みらんといい聖羅せいらさんといい、こうも簡単に全員にバレるなんて……獣人の知覚感覚なら全部お見通しってか!?


 なんか、もう———



「いっそ殺してくれ……!」



 頭を抱えて天を仰ぐ俺。

 今日一日は、朝から地獄のようになりそうだ。

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