酒池肉林(一方的に捕食されるだけ)

 聖羅せいら美藍みらんに挟まれ、じっと過ごすこと約1時間。圧倒的捕食者の二人に挟まれている俺は、なぜか比較的落ち着いていた。


 リスとしての俺は、命の危機を感じていないのだ。

 なんとなく彼女達に包まれ、守られてる気がして……。


 いや、こんな物凄い美少女2人が俺の腕を両側から抱きながら寝ているなんて、『男の本能が暴走しそう』という意味では、内心かなり荒ぶっているけど……。



 すぐ近くですやすやと寝息を立てる聖羅せいらに目を向ける。

 こうして寝顔を見ていると、ヒョウというよりはネコに見えてくるな……。


 SNSで流れてくるネコの動画を思い出し、無意識のうちに俺は聖羅せいらの喉に手を伸ばしていた。



 ゴロゴロゴロゴロゴロ———


(あっ、聖羅せいらさんもゴロゴロ鳴るんだ……)



 俺が聖羅せいらの喉を優しく撫でると、本物のネコのように、聖羅せいらの喉からゴロゴロと音が聞こえてくる。


 確かこの音って、ネコがリラックスしている時に鳴るんだっけ……ってことは、聖羅せいらさんは今かなりリラックスしているってことか?



 そう思うと、なんだか妙な達成感があった。

 草食獣な俺が、猛獣なヒョウを手懐けている……普通ならありえないその関係性に、俺はどこか興奮していた。



「んぅっ……」



 そんな時、聖羅せいらとは逆側……美藍みらんの方から声が聞こえてきた。寝言というよりは、熱がこもった吐息とも言うべきか———



美藍みらん、起きたか……?」


「……どこ触ってるのよ、変態……」



 目を覚ました美藍みらんは、顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけてくる。明らかに様子が変だ。



「どこって……っ!?」


「んっ……!」



 何も分からないまま手を動かすべきじゃなかった……毛布に隠れて見えないけど、確かに感じる温かさとムチムチとした感触。俺の左手は今美藍みらんの太ももに挟まれていて、手の甲が彼女の股間に———



「ご、ごめ———っ!?」


「大きい声出さないで、聖羅せいらちゃん起きちゃうから……」



 美藍みらんは俺の口を手で塞ぎ、顔を覗き込むようにしてそう伝えてくる。目を鋭く細めながらもどこかうっとりとした表情と、俺の上に乗ってきたことによって身体が密着し、俺の心臓は早鐘を打ち始める。



「……ハルのせいでスイッチ入っちゃった・・・・・・・・・・んだから、責任取ってよね……♡」


「っ~~!!」



 美藍みらんの長い舌が俺の首筋を這い、俺は思わず声を上げる———と言っても、口を塞がれたままだから、くぐもった悲鳴しか出なかったけど。


 彼女の荒い息遣いと、艶めかしい舌の感触が脳に伝わり、ゾクゾクと身体が震える。初めて感じるほど、生々しい感触だ。


 美藍みらんの舌は首筋をなぞりながら徐々に上がっていき、顎の横を通って———



「ふぉっ……!?」



 ついに耳まで到達した。



「ハルったら、声出しちゃって可愛い♡」


「っ~~!」



 ずるるっと耳の中にまで美藍みらんの舌が侵入し、擽るように中で蠢く。以前、興味本位で聴いたASMR動画とはわけが違う。音だけではなく、実際に感じる熱と感触が、艶めかしく中枢神経を撫でまわす。



 脳の奥に直接叩き込まれるようなそれ・・を耐えること10秒ほど。ようやく口を話した美藍みらんは、蕩けた表情で覆い被さってくる。



「ハルも準備オッケーでしょ……? ふふ……いただきま———んにゃっ」


「あなたも人の事言えないじゃない、発情ヘビ」



 右側から伸びてきた手が美藍みらんの顔を押しのける。いつの間にか聖羅せいらさんも起きていたようだ。


 美藍みらん聖羅せいらさんとでは身長差があるからか、顔を抑えられて突き放された美藍みらんは手が届かず、声を漏らしながらじたばたしている。



春空はるく君は耳を舐められるのは好きなの?」



 美藍みらんと入れ替わりで覆い被さってきた聖羅せいらが、そんなことを聞いてくる。寝ている時とは全く違う、品定めをするような捕食者の目だ。



「そ、そういうわけじゃ———」


「じゃあ、私もしてあげる」


「ふぉぉっ……!?」



 最初の甘噛みで身体が硬直し、直後に侵入してくる聖羅せいらの舌に、ゾクゾクと背筋が震えて声が漏れる。


 美藍みらんのものとはまた違う、少しざらついた舌が、脳の奥へと強い刺激を叩き込んでくる。



「せいらっ……それ、やばっ———」


「ふふ、気持ちいい……?」


「ちょっと、あたし以外で感じてるんじゃないわよバカハル!」


「んぅぅ———っ!」



 再び美藍みらんの舌が侵入してきて、思わず声を上げる。



「あっ……春空はるく君の表情蕩けてきた……」


「あたしより聖羅せいらの方がいいっていうの? ちゃんと躾けてあげなきゃダメそうね?」


春空はるく君の耳、美味しいわね……♡」


「もっとこっちに集中しなさいよ、ハル♡」



 右側は聖羅せいらのざらざらした舌に強めに嬲られ、左側は美藍みらんの長い舌に深く掻き回される。


 さらにはタイプの違う台詞を両側から交互に囁かれ、なんか、こう……もうヤバい。R18のASMR音源なんて遥かに超えてる。


 あぁ、『食われる』ってこういう———










「お兄~、あと美藍みらんさん達、夕飯———」



 夕飯ができ、春空はるく達を呼びに部屋に来た千夏ちなつは見た。小さなベッドの上で、濃厚に絡み合う兄と、美少女2人を。



千夏ちなつはどうする?】

  見なかったことにする

 ▶兄を取り返す



「お兄を返せぇっ!」



 千夏ちなつは躊躇うことなく、3人が絡み合うベッドの上へと飛び込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る