幕間 マヌケは見つかったようだな
「ぼ、勃起魔法ォ!??」
再び魔王国へ走り出した馬車の中で、素っ頓狂な声をヴィオラは上げた。
「お前なら何か知ってるかなって……」
「知らないわよ……勃起? 勃起ですって……? 勃起って……あの、男のチンポが伸びるヤツ? それで何ができるっていうのよ……」
「ああ、なんか不死身になったぞ!」
「不死身ィ!? ……えい」
「え、ギミャアアアアアアッ!?」
小規模の爆破で俺の左手首が吹っ飛んだ。真っ赤な血が噴火のごとくどばどば出る。
「何やってんだァァァァァァァァァッ!!!!」
「実験よ実験。ホントに不死身なら……ってうわっ、もうなんか生えてきてるわよ。……キモッ」
不死身じゃなかったらどうするつもりだったんだコイツ。
「てかなんで勃起でそんなんなるワケぇ!? 意味わかんないわよ!?」
「俺が知りてェぐらいだよ! そうだ中の人! 中の人聞こえますかァ!?」
『呼んだかね?』
声が聞こえたその瞬間、俺の腰の剣が光りだす。そして俺とヴィオラの間に半透明の何者かが出現した。
そいつは左右非対称の角を持ち、クセの強い長髪で、人間とは違う尖った耳を持った男だった。
────知能を持つ魔物、魔族の特徴だ。
『説明して欲しそうだったので、姿を現すことにしたよ。……お初にお目にかかるねご両人。私は悦楽のアスモデウス、”元”魔王軍十傑集が一人だ。よろしく頼むよ』
「魔王軍……十傑集!」
おじいちゃんから聞いたことがある。
魔王に近しい実力を持つと言われる十人の魔人たちのことを。
「その声……! アンタあの時の!! やっぱり魔王の関係者だったのね!?」
『やあ
「知ってるのかヴィオラ」
「私が宝物庫から魔王の首を持ち出した時に、ね。……胡散臭かったけど、帝国の不利益になるならなんでもよかったから」
ふん、とそっぽを向くヴィオラに、アスモデウスはニヤニヤしながら言った。
『いやはやしかし……期待してはいなかったが、本当に私の望みの人間を連れてくるとはねぇ。────蛇の道は蛇という、君も相当な好き者と見える』
「はァ!!? 私をこんな娼館狂いのロクデナシと一緒にしないでくれるゥ!?」
ホントのコトとはいえ傷付くなァ……。
「え、望みの人間? 俺が??」
俺がそう問うと、ヴィオラは額に手を当てて大きな溜息をつきながら答えてくれた。
「……できるだけ性欲が強く、精力絶倫な者の手に渡せって言ってきたのよ」
『勃起魔法は魔力の代わりに性欲を消費して行使する術だ、抜かずに三発くらいはできてもらわないといずれ性欲が枯渇して廃人と化してしまうからねぇ』
「へぇ~、俺は抜かずに八発はできるから大丈夫だな! よかったなァ、俺を選んで……ってヴィオラ、お前どうした?」
ふとヴィオラの方に目をやると、手を口で覆って何やらブツブツ言っていた。
「ウソウソ男って一回出したら終わりってばあや言ってたじゃないウソウソウソ……」
「……おい」
「えっ……あ、いや、何でもないわよぉ?」
何を言ってるかは聞こえなかったけど、様子がおかしい気がする。
『……処女を喪失する時に血が出るのは、男性器と処女膜が触れた際に爆発するかららしいよ?』
「「マジで!!!???」」
……ってんなワケないじゃん!
「ハハハ冗談キツいぜ、魔族も冗談言うんだな。なァヴィオラ!!」
「えっ」
ヴィオラの顔がなんかよくわからない表情を浮かべている。しかしすぐにその表情は切り替わり高笑いをした。
「そ、そうよ! 冗談にしては程度が低くてよ? おほ、おほほほほ……」
『あはははは、そう冗談、冗談さ。私は冗談が大好きだからねぇ……しかしまぁ、もっと面白いコトがわかったが……ま、今は言わないでおこう』
アスモデウスは窓の方を見やり、外を指差した。
『そら、見えて来たよ。あれが私たち魔族の故郷……』
鬱蒼────というには余りに黒々とした
初めて見た……。あれが────
『魔王の国、ニヴルヘイムだよ』
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