第35話 幼馴染との再会
思わぬところで幼馴染と再会を果たした。
おまけに彼女はトリシア生徒会長曰く、とても優秀な魔草薬師らしい。
ぜひとも彼女も我がギャラード商会の一員として加えたいところではあるが、今はコニーを優先させなくてはならない。
俺はクレアに頼み込み、容体を診てもらうことにした。
最初は戸惑いを見せていたが、最終的には「レークの役に立つなら」と了承してくれた。
「まさかあなたがクレアと知り合いとは思いませんでしたわ。そのおかげで話がすんなり進んでくれましたけど」
「会長は本当に知らなかったんですか、俺とクレアの関係について」
「まったく」
どうやらトリシア会長は素で俺とクレアの関係性を知らなかったようだ。
クレアは俺と最後に会ったのが数年前の幼少期であるという理由から、きっともう覚えていないだろうと思い、会長には話していなかったらしい。
まあ、実際、俺も途中まで気がつかなかったし。
とりあえず、寮に戻らなくてはいけない時間もあるので、早急に移動を開始しよう。
――で、女子寮へとやってきたわけだが、当然俺は中へ入れない。
コニーを診てもらっている間、男女共有のロビーでルチーナとともに待機することおよそ三十分。
「お待たせしました」
クレアとトリシア会長が戻ってきた。
「どうだった?」
はやる気持ちを抑えつつ尋ねると、クレアはすぐに答えてくれた――が、
「――で――が――そ――」
相変わらず声が小さい!
たまらずトリシア会長が通訳を買って出た。
「魔力熱が原因でしたわ。急に大量の魔力を消費した際に発生する可能性のあるもので、別段珍しいものではありませんの。修行中の魔法使いがよくかかると言われていますわ」
つまり麻疹みたいなものか?
……いや、ちょっと違うか?
ともかく、珍しいものではないというなら対処法もあるはず。
「どうすればその状態から回復するんだ?」
「それが問題ですわ。本来なら、魔力熱って長くても一日で治るはずですの」
「一日だと?」
コニーはすでに一週間ほどあの状態が続いていた。
クレアの言う魔力熱が原因だとすれば、もうとっくに治っているはずなのだ。
この疑問に関して、トリシア会長が仮説を述べる。
「恐らく、
「どういう意味ですか?」
「コニーさんは普段から
「えぇ、基本的にはひとつの属性に絞っています」
そもそもひとりで複数の属性魔法を使える者はとても希少な存在であり、コニーのように自分の意思でコロコロと属性を変えられる者となると何万人にひとりいるかいないかのレベルらしい。
あの時――ガノスのオークション会場では、怒りに任せて普段では絶対にしないような魔力の使い方をしていた。
存在しないはずの氷属性魔法の使用……コニー本人は複数の属性を組み合わせたと言っていたな。
たぶん、過去にも数えるほどしかいないという
――っと、いかん。
肝心の対応策をまだ聞いていなかった。
「コニーはどうしたらいつもの調子に戻れる?」
「…………」
俺からの質問を受けたクレアはトリシア会長に何やら耳打ち。
せめてもうちょっと心を開いてくれてもいいのに……
「今は自分の意思とは関係なく魔力が溢れ出ている状況で、それが発熱を引き起こしていると考えられますわ。熱自体は魔草薬で下げられるでしょうけど……根本的な解決というわけにはいきませんわね」
「つまり魔力を抑え込めればいいんですね?」
「端的には言えばそうですわ」
魔力を抑え込む、か。
それならあのアイテムが役に立つかもしれない。
「……なんとかなるかもしれない」
「魔力を封じ込める策があるっていうの?」
「むろんだ」
こういう非常事態のために、学園内にある我が商会専用の工房にはさまざまなアイテムを常備してある。
その中にあるアレを使い、コニーの魔力を制御する魔道具を作りだせばいい。
「そうと分かればすぐに部屋へ戻って構想を練る! 今夜は徹夜になりそうだ!」
「でしたら熱いコーヒーをお淹れしますね」
「頼んだぞ、ルチーナ! それと、クレア。いろいろと教えてくれてありがとう。君のおかげで大切な仲間を救えそうだ」
「っ!」
お礼の言葉を伝えると、彼女はニコリと微笑んだ。
――しかし、俺にはどこか無理して笑っているようにも見えた。
気にはなるが、すぐにでも脳内に浮かび上がるアイディアの数々をまとめたいので会長ともども別れの挨拶をしてから自室へ。
その途中、ルチーナが何の脈絡もなくいきなり語り始める。
「レーク様、私は修羅場というのが大好きなんです。強者同士の戦いから男女のあれこれまで……いいですよね」
「なぜ急にそんな話題を振る?」
あと、俺にはとても分かち合えない感性だ。
「特に他意はありません。……他意は」
めちゃくちゃあるパターンじゃねぇか!
クレアにしろルチーナにしろ、なんでこうも気になる言い方をするのか……すべてが解決したら問いただしてやろう。
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