第6話 祭りの晩に

夜気が充満する外にて。

夜羽一家はなあしさすの玄関先で立っていた。

「今日はお祭りだってさ。私たち、ついてるね。」

「ああ。行こう。夕季。」

「うん。」

民宿で借りた下駄を履いて、カランコロンと音をさせながら、

三人は夜の道を歩いて行く。

しばらく歩くと、灯りと人で賑わう神社が目に入った。

浴衣姿の人々が、各々はしゃぎながら会話を楽しんでいる。

「あっ、りんご飴だって!」

夕季は出店を見ると、一目散に駆けていった。

「こらこら、走ると危ないぞ」。

っと。言った傍から夕季は通行人にぶつかっていた。

「すいません、息子が…」

「いえいえ。お気になさらず。って、あれ?夕季くんじゃないの。」

「あっ。」

よく見ると、ぶつかった相手は昼に駅舎で挨拶を交わした、

花恋の父だった。

「こんばんは。」

「こんばんは。祭り、見に来たんですか。」

「ええ。せっかくですから。」

「お~い、花恋!」

「なに~?」

少し離れたところで遊んでいた、花恋が振り返った。

「夕季くんたちだぞ。」

その声を聴くと、花恋はすっ飛んできた。

「ゆっきー!」

「よ、よう。」

夕季は出会いから花恋にペースを握られっぱなしである。

「一緒に遊ぼ!」

夕季は花恋に手を繋がれると、二人で駆け出して行った。

「お~い、あんま遠くまで行くんじゃないぞ~!」

花恋の父が言う。

「わかってる~!」

「やれやれ、おてんば娘で困ったもんです。」

「元気があっていいですね。」

と、背後から浴衣姿の女性が姿を現した。

「あら、こんばんは。」

「こんばんは。」

「あっ、うちの嫁です。」

「ふふ。花恋ったら、もう仲良くなっちゃって。」

そして、二組の家族は共に神社の境内を歩きながら、歓談を楽しんだ。

子供たちは、ずっとはしゃぎっぱなしで疲れたのか、眠たげである。


祭りの終わる頃、家族は川へとやってきた。

ふいに見上げた空には、星が敷き詰められている。

「知ってる?」

花恋が口を開いた。

「何?」

「この町から見上げる星空が世界で一番きれいなんだよ!」

花恋はそう信じて疑わない、という口調で言った。

「そうだね。実に綺麗だ。」

落葉が共感する。夕季も、図鑑で見るような景色を実際に目の当たりにして、

しばし驚いていた。

祭りの晩は過ぎていき、二組の家族は帰り、別れ道で別れた。

「また遊ぼうね!」

「OK。」

別れ際、ふたりはタッチした。

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夏なんです ノーネーム @noname1616

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