第4話 世界は平和島
トンネルの扉の内部へ入った卜伝は、廃れた駅の外にいた。
ここは「遺構都市」と呼ばれる場所だ。
はるか太古から、日本の中心地に存在する謎の遺構。
現代技術と遜色ないその都市が、なぜ存在するのかは未だ不明だった。
卜伝は一人、黙々と歩を進めながら過去を回想する。
────俺が高校生だった頃。
親の転勤で転校した街、「幽谷市」は、
「羽咋教」という‘‘幽谷市の中でのみ信仰される‘‘宗教が支配していた。
その年の7月。教祖が直々に、街が7月中に滅びると「予言」した。
街は封鎖され、その中で俺は、知り合った友を救うべく、奔走した。
様々な人の欲望が交差し、おびただしいほどの死が繰り返された。
最後は羽咋教に復讐心を抱いていた、
「夏焼正義」が羽咋教を消すべく、全ての住人を滅ぼすという
計画を、俺たちが協力し、阻止したのだった。
結果、夏焼は逮捕され、教祖は死に、羽咋教は解体され、
街は国によって封鎖されるという結末に落ち着いた。
────それから俺は事件の収束と同時にまた転校し、
別の街で高校を卒業した。そして大学に進んでしばらく経ったある日。
俺はある男に声を掛けられた。
それは世界の安全を保つ組織、「三千世界の鴉」からの誘いだった。
幽谷市での俺の活躍…と称されるものを前々から知っていたリーダーに、
直々に誘われたのだった。俺はしばらく悩んだ末、組織に入ることにした。
そして現在。表向きは会社員だが、裏ではこうして組織の任務に当たっている。
今回の任務は…そう、幽谷市での事件と関係の深いものだった。
「夏焼冬人の遺伝子」…通称「NF遺伝子」の回収。
夏焼冬人(ふゆと)。夏焼正義の父親とされる男だ。
かなり昔に死んだはずだが、冬人はウチの組織と敵対する、
「裏日本委員会」のメンバーだったと発覚した。
生前、冬人はこの遺構都市に自らの遺伝子を隠したという情報が入った。
それ故、俺は今、遺構都市を探索しているのだった。
幸い、上空からの高精度のスキャンによって、
最深部に何かがある、ということが判明している。
そこに向かって、進むのみだ。
───卜伝は歩調を早めた。
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